スランプを趣味が解決してくれることも
確かに新卒社員の多くは、進学をするように、就職活動を経て、社屋の一角に着席をした。その是非を疑うこともなかった。実際に私も職場での友情を大切にしなくてはならないという、根拠なき思い込みにとらわれていたこともあった。
「会社って、本来、言いたいことを言う場所じゃなくて、言うべきことを言う場所。頭ごなしに決めつけてくる上司に、『ひどいじゃないですかぁ』というのはプロじゃない、『部長にとって当然のことなら、その理由を知りたいです。学んでいい部下になりたいから』と言って食い下がらなくてはならないの。かなりクールで、友人を見つけるような場所じゃない。だから、社外で友人を見つけることは私も大賛成です。でも、仕事も楽しまないと、友達ができても提供できる情報がないですよ」
友達に情報を提供するという、黒川さんの意見にピンときた。実際、そうなのだろうか?
「そう、情報はすごく大事。愚痴ばかりを聞かせてくるような人と一緒にいても、先へ進めないでしょう? 慰めてもらうためだけなら友情じゃなくて依存。相手にとっても楽しめる、有益な情報を共有していくことが大事ですよね。これが相手との距離感をつかむ、いいヒントにもなるんです」
そうは言っても、新人が「仕事も楽しむ=やらされ仕事を脱して、自分の好奇心を会社での業務に作用させていく」のは、それなりの経験やちょっとした技術がいるのでは?
「そうそう。だから社会人の皆さんにお勧めしたいのは、趣味を持つことなんです。コミュニティも増えるし、話題が増える。脳が仕事の知識モデルしかもっていないと、発想力に限界があります。先が見えず、どうしていいかわからなくなる。そういう時に、趣味で見つけた視点が自分を救ってくれます。また、さまざまな人間関係をもつことで、職場の人間関係を俯瞰する余裕もできる。趣味を持つことで得られるのは、デスクと自宅の行き来だけでは見つからない、他人との距離感なんです」