【図表5】日本にとって有効な少子化対策とは?
親に“パラサイト”する成人
まず、成人してからも親と同居する子供が多いことが挙げられます(図表5参照)。たとえばヨーロッパのほうは、成人したら親元から独立して生計を立てるのが当然だと考えられているので、いつまでも親元にいたら、あの人は大人になっても1人で生きていけないのかと不思議がられます。
ところが日本では、親と同居するほうが経済的合理性が高いと考えられています。これも不思議な話なのですが、われわれの時代には、地方から集団就職で都会に出てきた人も多いので、当然、田舎の親とは別々に暮らしました。しかし、その後の世代になると、親が都会にいるため、子供もそのまま都会で就職して、親と同居し続けるというケースが非常に増えてしまったわけです。そうなると、ますます結婚・出産へと向かうハードルは高くなってしまいます。
日本(や韓国)の場合はとくに先ほどの戸籍の問題などがあるので、もっと積極的に結婚を促進するような仕組みを考えないといけません。極端なことを言えば、30歳を過ぎてからも親と同居している人には税金をかけるといった議論が出てくるかもしれません。それから、賃貸にした場合の家賃の相場を調べて、子供に負担させるやり方もある。もちろん、実際問題としてそういったことを実施するのは困難でしょうけれども、どうにかして今の状況を変えないと、経済的合理性という理屈に守られて、成人した子供が親と同居して“パラサイト”している限りは、結婚や出産のきっかけすら生まれません。
それに対して、ヨーロッパのほうは、親元を離れて1人で生活するのは当然のこととされています。ただ、やはり独立して生計を立てようとすれば、それなりにお金がかかりますから、1人暮らしではなく、仲間3〜4人で一緒に生活コストをシェアしましょうということになります。そうなると、そこに男と女がいれば、恋人同士になることもありますし、さらに関係が深まれば、子供ができることもあるでしょう。
もしその2人が結婚していなくても、生まれてきた子供を登録すれば、立派な国民として迎えられます。あるいは、1人の女性から父親が違う2人目、3人目の子供が生まれることもあるでしょうし、1人の男性が複数の女性に子供を産んでもらうこともあります。
いずれにしても、結婚を前提としないで子供を産むケースが非常に多いのです。その場合でも、子育てと仕事の両立を国が全面的に支援するということでやっているわけです。
こうした国々の少子化対策を見ながら、日本でも結婚や出産を促進するような仕組みや施策に取り組んでいかなくてはいけないと思います。
※大前研一『経済参謀 日本人の給料を上げる最後の処方箋』(小学館)より一部抜粋・再構成