「シャネルやナイチンゲールの功績ばかり強調すると、社会的な意義や使命を背負っていないと、女性は独身でいてはいけないとの話になりかねません。そうした話題自体が、『一部の有能な女性でなければ、結婚することが当たり前』という偏見を生み出します。
独身だろうが、結婚していようが、子供を産んでいようがいなかろうが、それだけがその人の価値を決めるものではありません。名もなき市井の独身女性でも、輝いている人はたくさんいるのです」(荒川さん・以下同)
そもそも日本で結婚することが当たり前とされるようになってから、まだ約100年しか経っていない。荒川さんが続ける。
「日本人がみんな結婚するようになったのは、明治民法が1898年に施行されてから。それ以前の江戸期は未婚も多く、夫婦別財でしたが、明治民法は庶民にも家父長制を取り入れ、妻の財産権を剥奪して経済的自由を奪い、妻を家に縛りつけました。これにより、女性は結婚しないと生きていけない社会になったのです。
戦後もそうした思想が連綿と続き、夫は外で稼いで妻が家を守るという夫婦関係が確立しました。そして1980年代まで、生涯未婚率が男女そろって5%未満という皆婚社会が実現したのです」
だが時代の変遷とともに100年続いた「結婚の呪縛」が徐々に解けていく。
「今日より明日が豊かになると信じることができた高度成長期が終わると家庭の経済的基盤が揺らぎ、専業主婦が成立しなくなりました。一方で女性の社会進出も進み、稼げる女性は結婚に魅力を感じなくなった。また、自分を大切にする考え方が浸透して、『結婚しない自由』や『離婚する自由』が否定されない世の中になりました。単身女性が増加する現在は、まるで夫婦が対等だった江戸時代が再来したかのようです」
※女性セブン2022年5月26日号