医師を目指したきっかけは、高校3年生の時に「気胸」を患ったことだった。
「当時は胸腔鏡手術が普及しておらず、1か月入院し、開胸での手術を覚悟していました。しかし、胸腔鏡手術を受けられる病院が見つかり、手術は小さな穴だけ開けたような傷口で済みました。5日間で退院と回復も早く、手術はすごい! と感激。医学部に進路変更し、外科医を志しました」
消化器外科を選んだのは、切除だけでなく、再建までできるからだった。腹腔鏡手術を始めてから一貫して追求しているのは、高校生の時に自身も救われた手術の「低侵襲性」(身体に負担が少ないこと)。さらに、いま注力しているのが、進行直腸がんに対する「術前治療」(術前放射線化学療法、術前化学療法)だ。
「30%の患者さんから直腸がんが消失したという臨床的なデータもあります」
手術の技術力を磨きながら、手術をしない“究極の低侵襲性”治療にも挑む。
撮影/太田真三 取材・文/上田千春 図版製作/タナカデザイン
※週刊ポスト2022年6月24日号