ライフ

大腸がん手術の“ゴッドハンド”渡邉純医師が追求「再発させない質の高い手術」

渡邉医師がこれまで執刀した大腸がんの腹腔鏡手術・ロボット支援下手術(ダ・ヴィンチ手術)は約4500件

渡邉医師がこれまで執刀した大腸がんの腹腔鏡手術・ロボット支援下手術(ダ・ヴィンチ手術)は約4500件

 がん以外の良性疾患の手術も含めて週に平均10件、年間約500件の手術を手がける。このうち大腸がん(直腸がん、結腸がん)の手術は年間約300件。横浜市立大学附属市民総合医療センター・消化器病センター准教授の渡邉純医師(46)は、大腸がん手術の“ゴッドハンド”として国内外で知られる。

「“手術の質”で術後にがんが再発しやすくなるか、再発しにくくなるかが決まります。特に直腸がんは、膀胱や尿管、前立腺、子宮などの臓器が集まる骨盤の奥の非常に狭いスペースの中での執刀となり、難易度が高い。他臓器や血管、直腸そばに張り巡らされる排尿や性機能を司る自律神経を確実に温存しながら、直腸や転移の可能性があるリンパ節を極薄の膜に包んだまま剥離していく、安全域が狭い手術です」

 電気メスで直腸部分を剥離する際、付近の神経にまで切り込んで傷つければ、排尿障害など機能障害が出てしまう。再発させない質の高い手術に最大限努めると同時に、その他の臓器の機能の温存も徹底して図らなければいけない。ミリ単位で鉗子の位置や動きを調整する高度で繊細な技術が求められる手術だが、渡邉医師は滑らか、かつスピーディーに進めていく。

 午前7時30分、この日執刀する患者2人の病室に向かう。「患者さんが緊張しないように」と、白衣は着ない。気さくに話しかけ、患者の笑い声が時折、廊下にまで聞こえる。

 午前に70代女性の直腸がん手術、午後から40代女性の結腸がん手術を、手術支援ロボット「ダ・ヴィンチ」で“執刀”。通常半日かかるとされる手術を、どちらも約2時間10分で終えた。前者の直腸がん手術は肛門機能を温存する「低位前方切除術」だったが、この執刀を2時間程度で終えるのは驚異的な速さだ。手術時間が短いほど、体への負担は低減する。

「下部直腸がんに対し、90%の症例で肛門温存手術を行なっています。手術では直腸がん付近部分を切離した後の腸管を、肛門側の腸管と吻合し、再び便が通じるように再建しますが、腸管のどこを切ってつなぎ合わせるかが大きなポイントです。血流が多い部分でつなぎ合わせると術後の回復がよく、その血流のよい場所を見極める『ICG蛍光法』を手術で採用しています」

 血流が少ない部分で腸管を吻合すると、合併症の“縫合不全”を起こす原因になる可能性があるという。

「実は日本全体では現在、直腸がん手術後に縫合不全を起こす患者が10%にも上る。1000人手術すれば、100人が縫合不全で再手術や術後に苦しんでいるということです。当院の縫合不全は1.9%と少ないですが、全国の縫合不全を減らし、日本全体の治療成績を上げるための新たな治療開発や研究、若手医師への手術教育にも力を入れて取り組んでいます」

関連キーワード

関連記事

トピックス

割れた窓ガラス
「『ドン!』といきなり大きく速い揺れ」「3.11より怖かった」青森震度6強でドンキは休業・ツリー散乱・バリバリに割れたガラス…取材班が見た「現地のリアル」【青森県東方沖地震】
NEWSポストセブン
前橋市議会で退職が認められ、報道陣の取材に応じる小川晶市長(時事通信フォト)
《前橋・ラブホ通い詰め問題》「これは小川晶前市長の遺言」市幹部男性X氏が停職6か月で依願退職へ、市長選へ向け自民に危機感「いまも想像以上に小川さん支持が強い」
NEWSポストセブン
3年前に離婚していた穴井夕子とプロゴルァーの横田真一選手(Instagram/時事通信フォト)
《ゴルフ・横田真一プロと2年前に離婚》穴井夕子が明かしていた「夫婦ゲンカ中の夫への不満」と“家庭内別居”
NEWSポストセブン
二刀流かDHか、先発かリリーフか?
【大谷翔平のWBCでの“起用法”どれが正解か?】安全策なら「日本ラウンド出場せず、決勝ラウンドのみDHで出場」、WBCが「オープン戦での調整登板の代わり」になる可能性も
週刊ポスト
高市首相の発言で中国がエスカレート(時事通信フォト)
【中国軍機がレーダー照射も】高市発言で中国がエスカレート アメリカのスタンスは? 「曖昧戦略は終焉」「日米台で連携強化」の指摘も
NEWSポストセブン
テレビ復帰は困難との見方も強い国分太一(時事通信フォト)
元TOKIO・国分太一、地上波復帰は困難でもキャンプ趣味を活かしてYouTubeで復帰するシナリオも 「参戦すればキャンプYouTuberの人気の構図が一変する可能性」
週刊ポスト
世代交代へ(元横綱・大乃国)
《熾烈な相撲協会理事選》元横綱・大乃国の芝田山親方が勇退で八角理事長“一強体制”へ 2年先を見据えた次期理事長をめぐる争いも激化へ
週刊ポスト
2011年に放送が開始された『ヒルナンデス!!』(HPより/時事通信フォト)
《日テレ広報が回答》ナンチャン続投『ヒルナンデス!』打ち切り報道を完全否定「終了の予定ない」、終了説を一蹴した日テレの“ウラ事情”
NEWSポストセブン
青森県東方沖地震を受けての中国の反応は…(時事通信フォト)
《完全な失敗に終わるに違いない》最大震度6強・青森県東方沖地震、発生後の「在日中国大使館」公式Xでのポスト内容が波紋拡げる、注目される台湾総統の“対照的な対応”
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
《名古屋主婦殺害》「あの時は振ってごめんねって会話ができるかなと…」安福久美子容疑者が美奈子さんを“土曜の昼”に襲撃したワケ…夫・悟さんが語っていた「離婚と養育費の話」
NEWSポストセブン
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
週刊ポスト
優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン