おおらかな北海道の地で暮らす傍ら、小説を執筆した

おおらかな北海道の地で暮らす傍ら、小説を執筆した

 いくら北海道の人間がおおらかで細かいことを気にしないとはいっても、結局は狭い人間関係によって成立している地域社会である。

『羊なんか飼ってる嫁き遅れ』が『羊なんか飼ってるうえに小説書いてる嫁き遅れ』になって、うすら暗いことを色々と思う人もいるんだろうな、と痛感した出来事だった。

 多少もやもやはしたが、結局、私は大いに開き直った。『人様からどう見られるか』なんてことよりも、『どうやって次の小説を書くか』の方が私にとっては大事で、なおかつ途方もない問題なのだ。私の人生になんの責任もとれない人の戯言に構っている暇はない。

 なんせ、私はまだ一合目にも至れていないのだ。これからだ、これから。過去に応募した三作でも、思い返すと稚拙なところや表現しきれなかったと思う点は山とある。もっと深く、もっと広く。自分の満足のいく文章を。そして人の心に届く物語を。

 大学生の頃、私は不出来で物覚えの悪い学生だったが、ある講義の時に教授が言った一言が心に強く残っていた。

『自分は世界のどの位置を占めるのかを考えるように』という言葉だ。

 それは世の中における役割とも言い換えられるだろう。私が自分に定めた世の中の役割は、羊飼いとしていい羊を飼育し美味しい羊肉を送り出すこと。そう思っていた。

 もう一つ自分に課したい役割が増えた。私は、小説を書くことを仕事としたい。できることなら、羊を飼いながら作家になりたい。明確にそう思い始めた。

 実質的なこととして、道新文学賞は非常に厳格かつ適正な審査によって運営される素晴らしい文学賞だが、受賞をしても『デビュー』にはならない。作家になるためには、ここからさらに小説誌が主催する新人文学賞に応募し、賞によっては数千倍の応募作を勝ち抜かなくてはならないのだ。

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