修理をしていれば…
2018年7月には、東京・板橋区で一人暮らしの80代の父親が亡くなっているのを朝、実家を訪れた息子が発見。エアコンが故障していたが、実は息子は修理を手配済みだった。ところが、亡くなる前日に訪れた修理業者を父親が「エアコンは嫌いだ」と断わってしまったのだという。
熱中症で危険なのは自宅ばかりではない。2018年8月、岐阜県の病院でエアコンが故障した部屋に入院中の80代の患者5人が相次いで死亡した。エアコンの故障が死亡を招いたとして、病院院長が業務上過失致死容疑で書類送検された(嫌疑不十分により不起訴)。
これらの事例に共通するのは、熱中症発症時、エアコンを使用していなかったことだ。
2020年の東京都監察医務院データによると、東京23区内の屋内における熱中症死者の実に9割がエアコンを使っていなかった。その内の約5割はエアコンを「設置していたが使用していなかった」「故障していた」とされる。
熱中症といえば“屋外の炎天下”というイメージがあるため、過半数が屋内で起きていることは意外に感じられるかもしれない。この夏は政府の節電要請などでエアコンの使用を控える人が増えるとみられているが、屋内では適切なエアコンの使用を心がけたほうがよさそうだ。
※週刊ポスト2022年7月8・15日号