研修中から「この新人はすごい!」

『ぴったんこ☆カンカン』スタート時の安住アナ(時事通信フォト)

『ぴったんこ☆カンカン』スタート時の安住アナ(時事通信フォト)

 1997年、入社したばかりの安住アナの研修を担当したのは、当時アナウンス部副部長だったアナウンサーの吉川美代子氏だった。当時の印象をこう振り返る。

「2か月半ほどの研修期間中、ほぼ毎日見ていましたね。アナウンサー志望で来る人は少なからず目立とうとしたり、変に自信家だったりと、自我の強い人が多いものですが、彼はそういうことのない控えめなタイプでした。けれども、何をやらせても平均以上の点を取れる。能ある鷹は爪を隠すじゃないけど、まさにそういうタイプ。とても謙虚で真面目で、たゆまぬ努力を重ねられる人でした」

 とくに目を見張ったのがアナウンサーとして、言葉遣いを正しくしようとする姿勢だったという。

「彼は最初から、私たちの言葉をきちんと聞いて、それをしっかり飲み込んで発することができました。

 声の強弱をつける、といった上辺だけのテクニックを磨くのではなく、何をどう伝えるのかをその都度しっかりと考えて、ニュースや情報を届けるのがアナウンサーの仕事です。私は“自分の声で人を救えることもあるんだ”という意識と責任感を持ったアナウンサーを増やしていきたいと思っていましたが、彼はそれができる人だと感じていた。

 声はまさに人格そのもの。その人の品性や生き方が滲み出ます。どんなに正しい発声や言葉遣いでも、気持ちが入っていなければ空虚に響くだけ。彼には心から届けようとする意識があったし、今もそれを心がけていると感じます」(吉川氏)

 さらに研修期間の終わりには、吉川氏を唸らせるほどの力を示したという。

「研修の最終日、新人アナウンサーに10分間ほどのラジオ番組を作らせました。ニュースや天気予報、さらにフリートークをしてという内容ですが、聴く人にちゃんと伝えようという意識があり、完璧で、驚きました。そのままオンエアできるくらいのレベルで、『この新人はすごい』と、思わず立ち上がってしまったほどです。実はこの話をするのは初めてで、今まで本人にだって伝えたことはありません」

 TBSで37年間にわたってアナウンサー、キャスターとして活躍し、後輩に対しては本人のためを思っての厳しい指導で知られる吉川氏だが、“新人・安住アナ”はすでに高い評価を得ていたのだ。

(第2回につづく)

※週刊ポスト2022年7月8・15日号

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