リーマン監督は作品の狙いについて、「アメリカの1950年代から1970年代を描きたかった。これはプレスリーの伝記そのものではない。脚色もしている」と語っているが、もちろん興行的な勝算も大きな動機だった。
ハリウッドは長くネタ枯れに苦しんできたが、2018年に英ロックバンド・クイーンのボーカルだったフレディ・マーキュリーに焦点を当てた『ボヘミアン・ラプソディ』(配給20世紀フォックス)が9億ドル(当時のレートで1000億円超)という驚異的な興行収入を稼いだ。
『エルヴィス』が柳の下の2匹目のドジョウを狙ったことは間違いないが、見事にそれを果たした。クイーンが活躍したのは1970年代から1980年代、『トップガン』も1980年代の映画だったことからも、ネタ枯れにうんざりしたアメリカの映画ファンが20世紀に郷愁を抱いていることがうかがえる。3作品とも日本でもヨーロッパでも評判だが、世界中で“昭和ブーム”が起きているということかも。
■高濱賛(在米ジャーナリスト)