MCの心理的負担とリスクは大きい
それでも博多華丸・大吉は「小言のようなコメントから笑いにつなげる」というパターンで支持を集めてきましたが、毎日放送される朝ドラでは限界があるもの。どうしても「グチっぽくなる」という印象は拭えないのですが、皮肉にもネット上では「よく代弁してくれた」などと支持を集めているのです。
前述したように朝ドラ受けの本質は、視聴者の気持ちに寄り添うことである以上、博多華丸・大吉のコメントがグチっぽいものになることも、それが支持を集めるのも仕方のないことでしょう。そのすべてが『ちむどんどん』の内容と質が元になったものだからです。
もし『あさイチ』制作サイド、朝ドラ関係者、NHK上層部らがその状態に難色を示しているとしたら、「朝ドラ受けを減らす」は至極真っ当な策。そもそも朝ドラ受けはMCに心理的な負担や炎上などのリスクを強いるものだけに、無理してやらなければいけないものではないからです。
ただ一方で、朝ドラ受けが多くの視聴者を喜ばせ、必ずネットニュースになるほど注目を集めていることはまぎれのない事実。もはや「朝ドラ受けまでが朝ドラ」という認識の人も多く、彼らにとっては「たとえどんなコメントであっても必要なもの」なのです。
また、プロ意識の高い博多華丸・大吉が無難なコメントでお茶を濁すようなことは考えづらいでしょう。そのため、朝ドラ受けをこれ以上減らすことも、「率直に話してもらう」というスタンスを変えることも難しいのではないでしょうか。
やはり「朝ドラそのものの質をより高めていく」という姿勢が求められているのは間違いないでしょう。それは朝ドラが「日本で最も視聴者数が多い、唯一の帯ドラマ枠」であるからであり、博多華丸・大吉も視聴者も期待しているからこそグチっぽくなってしまうときがあるのです。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。