1969年7月場所で優勝した清國(写真/共同通信社)

1969年7月場所で優勝した清國(写真/共同通信社)

 清國は新大関だった1969年7月場所では千秋楽の本割の土俵で大鵬を破り、藤ノ川との優勝決定戦を制して新大関場所優勝を果たしている。杉山氏が言う。

「清國と同時代には重い腰と柔らかい体で個性的な四つ相撲を取った大麒麟(1970年9月場所後に大関昇進)もいました。部屋の兄弟子である大鵬のライバルだった横綱・柏戸に対して通算対戦成績で勝ち越し(9勝8敗)ており、“柏戸キラー”として名を馳せた。個性があり、存在感を発揮してくれた力士です。

 たしかにそうした昭和の名大関と比べると、今の大関は情けないですね。存在感が極めて薄い。アピールするものが少なく、残念で仕方がありません。原因は心技体の『心』の部分に尽きるのではないか。典型的なのが正代。実力がないわけではないが、精神的に弱い。御嶽海にしても負け方があっさりしすぎている。名大関と言われた力士たちとの違いは大きい」

大関が弱いと面白くない

 1963年1月場所後に昇進し、“インテリ大関”と呼ばれたのが、引退後に理事長も務めた豊山である。

 東京農大で学生横綱のタイトルを獲得し、双葉山率いる時津風部屋に入門。幕下付け出しデビューから6場所で新入幕を果たし、さらにそこから7場所で初の学生相撲出身の大関となった。突っ張りと右四つからの攻めを武器にスピード出世をした印象が強く残る。

「豊山は横綱になり得る実力を十分に備えていたと思います。しかし、大鵬、柏戸の厚い壁に阻まれた。同じ時代にがむしゃらにぶつかっていって綱を掴んだのが佐田の山でしたが、いかにもインテリらしく土俵を務めたのが豊山でした。組み止めての四つ相撲へのこだわりが強く、その意味では個性的でしたし、横綱に相応しいと思って見ていましたが、“柏鵬時代”に生まれたことが不運だった大関と言えるでしょう」(杉山氏)

 平成の時代になってからの力士だが、2000年7月場所後に大関に昇進した魁皇も、「横綱になれる素質を持ちながら、大関の地位で終わった力士のひとり」(同前)である。大関在位65場所は歴代1位タイ、大関として4回の優勝を誇る。

「2004年9月場所では13勝2敗で優勝し、翌11月場所では横綱・朝青龍に次ぐ12勝3敗で準優勝だった。あの時に横綱に昇進させてもよかった。ただ、11月場所の千秋楽で魁皇は朝青龍に勝っているのですが、前日の時点で星2つの差があったので14日目に優勝が決まってしまっていた。その印象の悪さもあって昇進を果たせず、成績を残しながら運が伴わなかった大関です」(杉山氏)

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