出場校の負担軽減のために何をすべきか
甲子園出場校の金銭的な負担を軽減するために、高校野球が放映権料を取るべきという意見もある。吉田輝星(現・日本ハム)などの活躍で金足農業が秋田県勢として103年ぶりの決勝進出を果たした2018年、野球部OBなどが『当初の寄付金の予算を大幅に超える可能性が出てきてしまいました』として、『甲子園賛助金』をインターネット上で呼びかけた。甲子園出場はお金が嵩むことも事実だ。
「朝日新聞が選手18人、責任教師、監督の20人に旅費と滞在費の補助を支給していますが、全額ではありません。しかも、応援に回る部員やチアリーダーやブラスバンドも甲子園には欠かせない存在でしょう。部員や応援団の旅費や滞在費は、主にOBなどの寄付金で賄っており、各高校とも金銭的な負担が大きい。そう考えれば、放映権料を取った上で高野連が分配するという方法があってもいいかもしれません。ただ、この案はNHKが受信料で成り立っているところに難しさもある。野球に興味のない人が『私たちの受信料を勝手に使うな』と抗議する可能性もある。民放から取る分には問題ないと思います」
2019年夏に出場した北海道の北照高校は、寄付総額2706万5628円を集めている。初戦敗退のため滞在費は少なく済んだが、勝ち進めば更に寄付が必要となったかもしれない。
「日本高野連はアメリカの全米大学体育協会(NCAA)をロールモデルにしてはどうか。NCAAはアメフトや野球、アイスホッケー、テニスなど24競技90大会を運営し、年間の収入は1000億円を超え、約8割はテレビ放映権料が占めると言われる組織です。収益は加盟校に再分配され、スポーツ振興や教育にあてられています。
日本の大学もマネしようとしていますが、大学スポーツにはそこまでの人気がない。日本の学生スポーツで最も人気が高いのは高校野球ですから、NCAAを見習う価値はあると思います。あらゆるスポーツを統一するのは難しいでしょうから、高校野球だけで取り組めばいい。
アマチュアスポーツの商業化が進むことに眉をひそめる人もいるかもしれませんが、お金の分配の内訳を明確にすればその批判もある程度クリアできるはず。サッカーくじの『toto』も導入時には批判されましたが、スポーツ振興に使われ、五輪などでの日本代表の躍進に一役買っています。甲子園は毎年盛り上がっているのに、出場校が多額の寄付金に四苦八苦している現状は改められてしかるべきではないでしょうか」
長い歴史を持つ高校野球のあり方が、あらためて問われているのかもしれない。