商業化が進むオリンピックの光と影

 かつてアマチュアの祭典だったオリンピックは、1984年のロサンゼルス五輪から商業化していった。1976年のモントリオール五輪が大赤字になって市の財政が破綻し、1980年のモスクワ五輪は西側諸国がボイコット。危機的な状況に陥ったため、IOC(国際オリンピック委員会)のサマランチ会長(当時)がテレビ放映権料と企業協賛金に目をつけて商業化へ舵を切り、2億ドルを超える黒字を出して大成功を収めた。

「ロス以降商業化が進んで、五輪招致を巡って買収疑惑が起こるなど、オリンピックと金は切っても切れない関係になりました。そんな事態を見ているので、高校野球はできる限りアマチュアリズムを貫きたいのかもしれません」

 高校野球が放映権料を取らないメリットもあるという。

「テレビ局から口出しされないですからね。オリンピックはテレビ局の都合でアメリカのゴールデンタイムに注目競技の決勝が行われることもある。時差のある開催国では早朝や深夜に近い時間帯に試合が開催されることもあり、選手のコンディションへの影響も懸念されています」

 テレビ局に競技が振り回されるのは、五輪に限った話ではない。バレーボールの「ラリーポイント制」はテレビの放送時間内に終わらせるために導入されたと言われている。以前はサーブ権を持つチームがラリーに勝って、初めて1点が記録された。しかし、試合時間が長くなり、テレビで全て放送できない。そのためサーブ権に関係なく、1プレーで1点入る「ラリーポイント制」が導入され、時間が短縮された。

「このルール変更は選手の体力を消耗させない利点があり、良いルール変更だったという意見もあります。ただ、いずれにしろテレビが競技のルールを変えてしまった。たとえば今は高校野球が9回制から7回制になるなんて考えられないかもしれませんが、いつかそんなことが起こってもおかしくない。アスリートファーストでルール変更されるならともかく、テレビという外圧で仕方なく変わるのは好ましいとは言えない」

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