この数字をもとに、小島さんがオミクロン株による第6波、第7波(2022年1月1日〜7月24日)のワクチン費用対効果を試算する。
「この間の11才から65才までの感染者数は722万3630人で、人口1万人当たりの推定感染者数は830人でした。また、3回目接種の感染予防効果は40%から0%まで推移したので、平均値の25%を採用しました。
するとワクチン接種により感染を免れた人数は1万人あたり208人となり、1万人に3回目のブースター接種をすると、208人が感染を予防できたことになる。1万人の総接種費用は4770万円なので、1人の感染を抑えるために22万9000円かかったことになります」
インフルエンザと比較するとどうなのか。
「インフルエンザは毎年1000万人が発症し、感染率は8%とされます。ワクチンの発症予防効果を50%、1回分の接種価格を3500円として試算すると、1人の発症を抑えるためのワクチンの費用は8万7500円でした」(小島さん)
『女性セブン』も第7波到来時(7月18〜24日)の感染予防効果に対するワクチンのコストパフォーマンスを独自に試算した。
まず未接種者の陽性率を総人口に乗算し、ワクチンを打たなかった場合の新規陽性者数(86万4940人)を導き、そこから実際の新規陽性者数(63万6286人)を引いた22万8654人を「ワクチンの効果で感染しなかった人」とみなした。
さらにワクチン確保に要した費用(2021年度予算案までのワクチン購入費1兆9613億円)から、ワクチンの効果で感染しなかった人に要した金額を試算すると、7月18〜24日の期間で1人の感染を抑えるために約858万円かかった計算になる。この結果を血液内科医の中村幸嗣さんが解説する。
「デルタからオミクロンになってワクチンの感染予防効果が格段に低下し、それに伴いワクチンの費用対効果も減少しました。重症化予防の効果はありますが、オミクロンの感染防御としてコスパはよくないと言えるでしょう」
それだけでは終わらない。懸念されるのは、今後も壮大な無駄金が発生することだ。
「日本は8億8200万回分のワクチンを買いましたが、8月2日時点でワクチンの総接種回数は3億200万回で、5億8000万回分が残りました。うち8800万回分は海外供与や購入キャンセルで消化しましたが、まだ5億回分近くが未接種のままです。しかも秋から厚労省はオミクロン対応のワクチン接種を進める方針で、5億回分の従来のワクチンは廃棄される可能性が高い。
もはや国はコロナ対策のポーズか、ワクチンの購入そのものが目的になっています。ワクチンの購入費用は国会審議を必要としない予備費で賄われることから、財政規律が緩んでいるとの批判は避けられません」(小島さん)
年に1度の接種で済むインフルエンザと違い、コロナのワクチンは変異のたびに打ち、期限切れは廃棄しなければならないのでコスパは悪いのかもしれない。
※女性セブン2022年9月1日号