(時事通信フォト)

春ドラマでの毒母ぶりが話題に(時事通信フォト)

斉藤由貴の目力はダイエットが転機に?

『スケバン刑事』(フジテレビ系・1985年)で、ヨーヨーを構えながらセーラー服姿を披露していた演技にインパクトがあった斉藤由貴さん。歌を歌えばヒット連発、次々に作品へ主演を重ねる、トップアイドルだった。

 毒母役との好相性ぶりを見せたのは、私の知る限りだと『お母さん、娘をやめていいですか?』(NHK総合・2017年)の早瀬顕子役。娘の美月を演じたのは、波瑠さんだった。昨今、スタンダートになりつつある“友達親子”のつもりでずっと生活してきたけれど、娘は母親のストーカーぶりに辟易していた。そりゃ、自分のデートまで追跡してくるのだから、傍迷惑だ。結婚しても母娘はずっと一緒、そう信じていた牙城を崩された顕子の精神も崩壊していった。

 今年、春クール放送『恋なんて、本気でやってどうするの?』(フジテレビ、関西テレビ系列・2022年)での、毒母ぶりもSNSで騒がれた。こちらはギャンブル依存症を患っていたパターンだった。

 もちろん毒母以外にも母親役としてキャリアは十分すぎるほど、周知されている斉藤さん。でも富田さんと圧倒的に違うのは、ギャップが感じられないこと。毒母役が非常にナチュラルに怖いのである。その理由に、斉藤さんの大きな瞳で表現する演技を挙げたい。

 実はこの瞳には個人的に注目していた。かつて、斉藤さんは結婚を機に少し仕事量をペースダウンしていた。3児の母であれば、相当に多忙だったはず。ただその期間を経て、完全復帰を決定づけたのが『我輩は主婦である』(TBS系・2006年)での主演作。脚本家の宮藤官九郎さんが、熱血斉藤由貴ファンゆえに作った台本であると、どこかの記事で読んだ。ただこの当時の斉藤さん、今よりもふっくらとされていて、目力があきらかに下がっていた。どっしりとした、いいお母さんという雰囲気を醸し出していたと言おうか。

 それが50歳目前にしてダイエットに成功した斉藤さん。確か『はなまるマーケット』(TBS系)で話していた、ハードなカロリー制限のダイエット方法だった。彼女はあきらかに目が大きくなって、鼻筋がくっきりとしていた。元々、誰もが認める美女である。セーラー服当時の華奢さが戻り、演じる役柄も格段に増えていく。

 2006年頃の斉藤さんでは務まらなかったであろう、毒母役。ご本人の努力を経て、目力とともに巡ってきた役柄なのだと想定すると……これは必然だったのかもしれない。

 富田さんと斉藤さん。二人の毒母役による怪演ぶりは似て非なるものだ。そしてこの物語はまだまだ続いていく。次は嫁を泣かせる毒姑役なんてどうかしら。

【プロフィール】
小林久乃(こばやし・ひさの)/エッセイ、コラムの執筆、企画、編集、プロモーション業など。出版社勤務後に独立、現在は数多くのインターネットサイトや男性誌などでコラム連載しながら、単行本、書籍を数多く制作。著書に、30代の怒涛の婚活模様を綴った『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』(KKベストセラーズ)、『45センチの距離感 -つながる機能が増えた世の中の人間関係について-』(WAVE出版)がある。静岡県浜松市出身。Twitter:@hisano_k

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