その局に眠るアーカイプは、「ネットにはないテレビ局ならではの財産」そのもの。コロナ禍に入って以降、民放各局がその価値を見直し、「アーカイブを積極的に使おう」という姿勢を見せていることも「昭和」を扱う機会が増えた理由の1つでしょう。たとえば、現在はコンプライアンスやクレーム回避などの理由から撮影できないことも、昭和の番組で放送されたものなら使用して驚きや笑いにつなげられるなど、表現の幅を広げることができます。
もちろん膨大な資料の中から現在の視聴者に受けそうなものを探し出すのは労力が必要であり、使用許可を得ることが困難なものもあるでしょう。しかし、作り手たちは「家族視聴とSNSの盛り上がりを狙える」というメリットの大きさをわかっているため、地道な努力を重ねているのです。
「8月は昭和を振り返る時期」の意識
今、昭和が地上波のゴールデンタイムで使われている理由としてもう1つあげておきたいのは、「8月」の持つ特殊性。8月は戦争を中心に「昭和を振り返る」という意識が強い時期であり、毎年それらの番組やコーナーを手がけるテレビ局員はなおのことです。
また、大人も子どもも夏休みがある上に、特にお盆前後は家族・親族が集まりやすい時期。テレビマンが家族・親族がそろって見てもらえる企画を考えたとき、「8月だし、昭和の特集がいいのではないか」と考えるのは自然な流れなのです。
余談ですが、冒頭にあげた『サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん』(テレビ朝日系)の「昭和アイドルベスト20 SP!!」は、『24時間テレビ』(日本テレビ系)対策の特番とも言えるでしょう。日本テレビ以外の民放各局は高視聴率を獲得し続ける「『24時間テレビ』の裏でどんな番組を放送するか」の編成に頭を悩ませているからです。
その『24時間テレビ』も昭和のころから続く長寿番組ではありますが、昭和のアイドル特集が一矢報いることができるのか。注目してみてはいかがでしょうか。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。