若者の倍速視聴は令和のデフォルト

 短時間放送のドラマは実はまだある。『ポップUP!』(フジテレビ系列)内で、毎週金曜、15分だけ放送中の『ひるドラ』。完全に主婦層を狙った、ちょっとした胸キュンドラマである。正直、ちょっと物足りないのでもう少し恋愛関係がザクザクと踏み込んでくれたら、というのか私の主観だ。

 さらに『土曜はナニする!?』(関西テレビ、フジテレビ系列)内で『イケドラ』というコーナーがある。新人のイケメンタレントが毎月、毎週、自分が恋の相手役になったかのようなラブストーリーを展開。かつては神尾楓珠さん、森崎ウィンさんらも出演履歴のある人気企画なのだ。

 例えば職場の先輩、幼なじみ、偶然出会った人……と、毎回違うシチュエーションで朝から画面に飛び込んでくる色男たち。金曜の二日酔いも朝から吹っ飛ぶというものである。ちなみにこのドラマの放送時間は、現在最短記録の約4分間らしい(関西テレビホームページによる)。ただこちらの作品、個人的には物語云々ではなく、愛眼専用なのでこれでよし。

 こうして並べてみると、確かに短時間放送のドラマが増えている。毎週1話、60分枠放送の連続ドラマをこよなく愛し続けている私からすると「たったの4〜5分間で、いいのだろうか」と、いささか切ない。でもこれからの時代を担っていく、大学生たちに言わせれば「短時間のドラマ(を見るとき)は倍速ではないから面白い」とのこと。なるほど。

 彼らはこの世に溢れた動画やドラマを「長い」と言い切って、1.5倍速、ときには2倍速で視聴することがデフォルトになっている。ドラマオタクからすると、倍速にすれば演者の機微も不可思議になるし、声色も変わる。作品の意向が読めなくなるので、まず手を出さない。でも彼らは友人に話を合わせるためにも、単純に楽しさを追求するためにも“質より量”と考えが割り切っているのである。ぐうの音も出ない、令和の正論だ。

 このドラマ短時間化現象、地上波ではどこまで続くのだろうか。バラエティ番組がこの現象を顕著に受けていて、すでに短時間化が実行されている番組もある。でもせめて連続ドラマだけは60分枠のままであってほしい。序盤15分、中盤30分、終盤45分とストーリーを予測しながら追いかける美しさが……そこにはある。

【プロフィール】
小林久乃(こばやし・ひさの)/エッセイ、コラムの執筆、企画、編集、プロモーション業など。出版社勤務後に独立、現在は数多くのインターネットサイトや男性誌などでコラム連載しながら、単行本、書籍を数多く制作。著書に、30代の怒涛の婚活模様を綴った『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』(KKベストセラーズ)、『45センチの距離感 -つながる機能が増えた世の中の人間関係について-』(WAVE出版)がある。静岡県浜松市出身。Twitter:@hisano_k

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