松江城(島根)
全国各地に残る美しい城や城跡にも暗い歴史がある。島根県松江市にある松江城は、珍しく江戸時代の築城当時のままの天守が現存。国宝に指定されている。一帯は城山公園として整備され春には桜が咲き誇り、「日本さくら名所100選」にも選ばれた島根の観光名所のひとつだが、築城時にまつわる人柱伝説が残る。
「本丸の工事中、何度も石垣が崩れるなどの怪事が重なり、地鎮のために人柱を立てることに。城の広場で開かれた盆踊りの最中に、美しい少女をさらい人柱にしてしまいました」
犠牲になった少女の呪いなのか、城が無事に完成し盆踊りが催されると、太鼓に合わせて天守が不気味な音を立て揺れ動いたという。以来、城下の盆踊りは禁止になったとか。
一見、美しい場所や賑やかな場所も、歴史をたどれば怨念が渦巻いているのかもしれない。本書は豊富な資料や貴重な秘蔵写真、地図が掲載され、読めばより臨場感が増すだろう。年末年始、本書を手にすれば行く先々で楽しめるのではないか。
【プロフィール】
『なるほど地図帳』編集部/昭文社のベストセラー『なるほど地図帳』の編集スタッフ。同書は充実した地図を中心に、国内外の時事問題からスポーツ、文化芸能、民俗風習、観光名産、歴史、自然などのテーマ別コンテンツを満載した大型本だ。
構成/中野裕子(ジャーナリスト)