野党から与党・自民党へ移動する議員たち
今井さんのように、野党から自民党へと傾斜する政治家は決して少なくない。例えば、2022年の参院選に宮城選挙区から出馬した桜井充候補は、1998年に民主党候補として当選。以来、着実に当選を重ねた。
5選を目指した2022年の参院選では、自民党の公認候補として立候補。この事態に、これまで桜井議員に票を投じてきた支持者が混乱したことは言うまでもない。そして、桜井候補と戦ってきた自民党支持者も困惑したことだろう。
細野豪志議員も、野党から自民党へと移った一人だ。2000年の衆院選に民主党から立候補して初当選。その後は選挙区で勝ち続けて現在は当選8回を数える。その間、2010年に発足した菅直人内閣では内閣府特命担当大臣として初入閣している。
細野議員は菅直人内閣で原発事故再発防止担当大臣だったため、東京電力本社で実施されていた記者会見にも姿を見せていた。筆者は、記者会見で細野議員が怒りを露わにしている姿を何度も目撃したことがある。大臣といえども人間だから、感情を表に出して怒ることはあるだろう。しかし、何度も目撃したことで大臣としての資質に疑問を覚えた。
その後の民主党の迷走は説明不要だろう。その間、細野議員は一貫して野党を貫き、離党して無所属だった2021年衆院選も自民党候補を相手に圧勝し、自民党へ入党した。細野議員が選挙に強い理由は、新人だった頃なら若くて見た目がいいで説明がついた。しかし、フリーアナウンサーとの路上キスをスクープされた後も無類の強さを発揮している。ここまで選挙に強いのは、地元の有権者から信頼を得ているからだろう。
それでも選挙は水モノだ。王国を築いていた議員が、情勢の変化で落選することは珍しくない。永田町には「猿は木から落ちても猿だが、代議士は選挙に落ちればただの人」という格言があり、落選すれば権力を維持できない。権力のないところに人は集まらないから、政治家たちは死に物狂いで選挙を戦う。
そして、現在は選挙に勝っていても、いつかは落選するかもしれないという不安からは逃れられない。そうした不安から、支持基盤の堅い自民党に頼ろうとする心意はわからなくもないが、支援者は不満を爆発させる。その理由は、「選挙に勝つためなら、自民党に魂を売るのか?」という一点につきる。
政界渡り鳥と呼ばれた小池百合子都知事
細野議員が連携していた小池百合子都知事も、多くの政党に属してきた。政治に長らく携わっている記者たちでも、小池議員の身の振り方を激しく感じる。小池議員にとっては理屈に適っているのだろうが、他人からは節操がないとしか見えない。そうした変わり身が、政界渡り鳥などとも揶揄される所以だ。