国内

『Youは何しに日本へ?』出演の裏社会研究家イタリア人女性に密着 とりこになった一夏の経験

マルティーナ・バラデル氏

マルティーナ・バラデル氏

 テレビ番組『Youは何しに日本へ?』は日本を訪れた外国人に来日の目的を聞き、密着するテレビ東京の人気番組だ。1月30日放送回で登場したイタリア人女性をご存じだろうか。流暢な日本語で「日本のヤクザ(番組では「裏社会」)の研究をしにきた」と語り、大学院に進んで博士課程まで修了したという彼女に司会のバナナマンも興味津々だった。惜しくも番組は密着できなかったが、日夜ヤクザ取材に明け暮れるフリーライターの鈴木智彦氏が彼女を“逆取材”してみた。【全3回の第1回】

 * * *
 マルティーナ・バラデル氏を紹介されたのは2018年2月だった。暴力団研究をしているイタリア人女性で、当時はロンドン大学の法学部犯罪学科の博士課程で学んでいる大学院生だった。彼女は日本の組織犯罪、つまり暴力団を3年間に渡って研究し、前年の11月から東京の立正大学に留学していた。半年の留学を終えて帰国する前に、会って欲しいとメールをもらった。 

 正直、ヤクザに興味津々の外国人には辟易している。ヤクザは「ニンジャ」と同じ分類で、歪んだヤクザ像を矯正してもらうのに苦労するからだ。色メガネを外してくれても、彼ら“ガイジン”たちはヤクザをひどく脚色し大げさに伝える。ヤクザは殺し屋であり、世界最大級の犯罪結社であり、社会の裏側で日本を牛耳るフィクサーだ……としたほうが母国でウケるのはわかるが限度がある。

 日本語に堪能で、しっかりした調査報道を学び、新聞社に属していても信用ならない。ヤクザをデフォルメするばかりか、自分を犯罪ノベルの主人公に仕立て、ヤクザエキスパートと世界に発信し始める。面倒で、時間をとられ、頻繁にトラブルを起こす。山師の信用を高めるために、自分の名前や仕事が利用されるのは心底懲りた。

 とはいえ、紹介者の顔を立てるためマルティーナ氏とは会った。こちらの心が閉じているから、突っ込んだ話はしなかった。ところが彼女はしつこく、いや、粘り強くコンタクトしてくる。2020年には論文執筆のため取材をしたいのだがコロナ禍で来日できないため、いくつか質問したいとメールをもらった。その時の質問が以下の7つだ。

1)近年、歌舞伎町におけるヤクザの存在感は薄くなっていますか?
2)薄くなったとするなら、影響力そのものが減りつつあるのか? また、みかじめ料にどういう影響がありましたか?
3)暴排条例とともに、ヤクザに関わる営業(クラブや、キャバクラなど)も取り締まられましたか?
4)ヤクザが見えなくなって、シノギにも影響がありましたか? また、ヤクザは新たな環境にどうやって適応したのでしょうか?
5)歌舞伎町の取り締まりの結果として、ヤクザが別な場所、エリアに移動しましたか?
6)暴排条例などが実行されてから、歌舞伎町にヤクザと関係のないお店が増えましたか?
7)ヤクザに対して、水商売で働いている人の態度が変わってきましたか?

 質問の内容をみて、彼女がヤクザと日本の社会にかなり詳しいと理解した。これまでの“ガイジン”たちと違っていた。なぜそこまでヤクザに惹かれ、深く調査したいのか興味が湧いた。今年初め、彼女に再会してみたところ、テレビ東京の人気番組に出演したという。

「日本の無視されている団体、裏社会を取材しています。日本の警察の書類を使ったり、取材したり」(『Youは何しに日本へ?』より抜粋。1月30日放送)

 ならばいい機会だ。ヤクザ沼にはまった女性イタリア人研究者に逆取材を申し込んでみた。

関連記事

トピックス

靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト
公金還流疑惑がさらに発覚(藤田文武・日本維新の会共同代表/時事通信フォト)
《新たな公金還流疑惑》「維新の会」大阪市議のデザイン会社に藤田文武・共同代表ら議員が総額984万円発注 藤田氏側は「適法だが今後は発注しない」と回答
週刊ポスト
“反日暴言ネット投稿”で注目を集める中国駐大阪総領事
「汚い首は斬ってやる」発言の中国総領事のSNS暴言癖 かつては民主化運動にも参加したリベラル派が40代でタカ派の戦狼外交官に転向 “柔軟な外交官”の評判も
週刊ポスト
超音波スカルプケアデバイスの「ソノリプロ」。強気の「90日間返金保証」の秘密とは──
超音波スカルプケアデバイス「ソノリプロ」開発者が明かす強気の「90日間全額返金保証」をつけられる理由とは《頭皮の気になる部分をケア》
NEWSポストセブン
三田寛子(時事通信フォト)
「あの嫁は何なんだ」「坊っちゃんが可哀想」三田寛子が過ごした苦労続きの新婚時代…新妻・能條愛未を“全力サポート”する理由
NEWSポストセブン
大相撲九州場所
九州場所「17年連続15日皆勤」の溜席の博多美人はなぜ通い続けられるのか 身支度は大変だが「江戸時代にタイムトリップしているような気持ちになれる」と語る
NEWSポストセブン
初代優勝者がつくったカクテル『鳳鳴(ほうめい)』。SUNTORY WORLD WHISKY「碧Ao」(右)をベースに日本の春を象徴する桜を使用したリキュール「KANADE〈奏〉桜」などが使われている
《“バーテンダーNo.1”が決まる》『サントリー ザ・バーテンダーアワード2025』に込められた未来へ続く「洋酒文化伝承」にかける思い
NEWSポストセブン