「中でも毎年の骨密度検査や乳がんマンモグラフィー検査は有害だという声が大きいです。骨密度に関しては、1年で急激に落ちることはまずないからムダであるうえ、エックス線の被ばくリスクがあります。
アメリカには、各専門医学会が検証し、ムダな医療を公開する『チュージング・ワイズリー(賢明な選択)』がありますが、この基準に照らし合わせると、10年に1回で充分とされています。
マンモグラフィーに関しては、90万人の女性が10年間検査を受けた結果を調べたところ、半数が偽陽性と診断されていました。誤診断されれば、時間もお金もムダになるし、誤って治療されるリスクもある。症状がない人への検査は、アメリカでは否定する声が大きいのです」(室井さん)
病気を予防するという観点でいえば、うがい薬にも疑念の声がある。
「京都大学の研究では、うがい薬より水でうがいをした方が効果があることが明らかになっています。ウイルスや菌を消毒液で殺すよりも、洗い落とすのが新しいやり方。手も同じで、アルコールで消毒して放置するよりも、定期的に流水で洗う方が効果的です」(秋津さん)
治療の中にも「世界基準」からずれたものがある。
“銀歯”があると老け顔になるばかりか、時代遅れの虫歯治療だという。『やってはいけない歯科治療』著者の岩澤倫彦さんが解説する。
「銀歯の治療は健康な歯も削る必要があり、金属アレルギーの原因にもなるため、先進国では日本のみ。世界標準の治療はプラスチック系素材の『コンポジット・レジン』です。削る量が必要最小限で、歯を長持ちさせることができ、審美性も高い」
生活習慣病への過剰医療が多いのも、日本の特徴だ。
「アメリカの治療指針では、喫煙や高血圧などの動脈硬化の危険因子がない場合、治療の対象になるのは、LDLコレステロール190mg/dl以上です」(大西さん)
一方日本では、LDLコレステロールが140mg/dl以上の場合、高LDLコレステロール血症と診断されて薬が処方される。しかし高脂血症の薬の中には横紋筋融解症などの副作用があるものも存在するうえ、生活習慣病の薬はのみ始めたら継続的な服用が求められる。
高血圧や高血糖の治療についても同様だ。
「米国老年医学会は65才以上の糖尿病患者および60才以上の高血圧患者に関しては投薬による低血糖や低血圧に一層気をつけるべきだと警鐘を鳴らしている。
数値に縛られていては思わぬ副作用の害を受けることもあります」(室井さん)
つまり、私たちは医師や病院の意見をうのみにしすぎているのかもしれないということ。実際、診断や治療選択などについて現在診療を受けている担当医とは別の医療機関に求めるセカンドオピニオンの定着度も大きな差がある。「そもそも日本人はセカンドオピニオンに関して消極的すぎる」と室井さんは言う。
「セカンドオピニオンを取りたいと担当医に相談して、怒られたという話をよく聞きますが、さまざまな医師から話を聞くのは患者の自由であり、権利です。後悔のない治療を選択するために、納得するまで別の医師の意見も聞くべきです」(室井さん)
日本の常識は世界の非常識。情報を更新して、海外のいいところは取り入れよう。
※女性セブン2023年3月2・9日号