日本の玄関ドアは外開き(イメージ)
「日本人はもともと防犯意識が甘い」と前出した暴力団幹部は言葉に力を込める。「押し込みみたいなものはないだろうというのが前提の文化。だから高齢者ほど、カギをかけたらそれで安心。塀を高くしたからそれで安全と思い込む。だが海外に比べて日本の家は、泥棒に入られやすい。地震は想定しても、泥棒を想定して家を作っていない。窓のそばに雨どいがあるのがいい例だ。泥棒に入ってくれと言わんばかりの構造だろう」 泥棒が窓から侵入する際、雨どいを足場にする可能性は高いという。これが暴力団組員であれば、他からの襲撃や警察の家宅捜索、ガサ入れから逃げる時の足場になるらしい。
玄関ドアは「内開き」か「外開き」か
「もっとわかりやすいのが玄関のドアだ。日本の家のドアは”外開き”が多い。だが海外は圧倒的に”内開き”だ」と話す。日本は玄関で靴を脱ぐという習慣があるため、家のドアは外開きが多いといわれている。昔ながらの家なら横開きの引き戸だ。しかし防犯上、外開きは危険だと幹部は言う。
「強盗でもなんでも、無理やりドアから入ってこようとしたら、ドアの内側に逃げられるし、全体重をかけてドアを押し戻し、閉めることもできる。家具を何か置いて侵入を防げるし、いざとなれば中に籠城することもできる。だが日本にはそういう発想がない。外側に開けば、チェーンをかけていても、ドアチェーン用カッターで切られれば、それで終わり。ドアノブを掴んだだけでは引っ張られる力に抗えない。海外から来たヤツらは最初、外開きのドアを見てびっくりする」(暴力団幹部)
なぜこんな話を暴力団幹部らに聞いたかといえば、実は彼らは防犯意識が高いのだ。タタキに入るような者がいるからではない。問題が起これば対抗勢力からの襲撃に備え、抗争が起きれば24時間体制を組み、警戒を怠らない。警察の急なガサ入れにも常に準備しておかなければならないからだ。
「事務所のドアが外開きだと、警察が来た時、簡単にチェーンを切って中に入られてしまう。逃走するわずかな時間すら確保できない。抗争相手が押し入ってきても、それを阻止することもできない」という幹部は、「ホテルのドアは火災の時、避難する人の邪魔にならないよう内開きになっているというが、誰が宿泊するか、出入りするかわからないのがホテルだ。防犯対策もあるだろう」
「ただし」と幹部は付け加えた。「内開きのドアは、ドアを開けようとした時、後ろに立たれたら逃げられない。内開きにしろ、外開きにしろ、ドアを開ける時はきちんと確認することが必要だ。カギをかけていてもやられる時はやられるが、一番の防犯はやはり人の目。これに勝るものはない」(暴力団幹部)。