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《追悼》畑正憲さんの「よーし、よしよし」に秘められた高度なテクニック 無謀に見えて裏では相当な努力

87歳で生涯を閉じた畑正憲さん

87歳で生涯を閉じた畑正憲さん

「ムツゴロウさん」の愛称で親しまれた畑正憲さん(享年87)が4月5日、心筋梗塞で亡くなった。畑さんが無人島生活を経て、北海道浜中町に「ムツゴロウ動物王国」を創設したのは1972年。約450万平方メートルの広大な土地で人と動物が共生する異例の試みに当時、フジテレビの編成局長だった日枝久氏(現フジサンケイグループ代表)が賛同し、1980年から『ムツゴロウとゆかいな仲間たち』(フジテレビ系)の放送が始まった。

「動物王国に密着したドキュメンタリー番組は、大きな反響を呼び、最高視聴率が30%を超える大ヒット企画になりました。畑さんの方針で、やらせや仕込みは一切なし。ブラジルでライオンに指を食いちぎられたり、スリランカで象に踏まれそうになるシーンもそのまま放送されました」(芸能関係者)

 畑さんと5年間同居した友人で、獣医の中田千佳夫氏が振り返る。

「無謀に見えますが、畑さんはカメラが回っていないところで相当な努力を重ねていました。海外に行くときは事前に現地の文献で動物の生態を調べ、現場でも時間をかけて観察するんです。その上で大丈夫だという確信を得たら、ようやく動物との距離を縮める。スタッフには万が一のことがあったとしても『助けに来るな』、『自分は放って逃げてくれ』と言っていました。命がけで動物と向き合っていたんです」

 長年、畑さんを支えた動物王国の元スタッフ、石川利昭さんが続ける。

「芸人さんなんかにもよく真似されてましたけど、ムツさんは動物に『よーし、よしよし』ってやってたでしょう。あれは単になでてるだけじゃなく、手をセンサーのようにして体の状態を確認したり、相手の感情をくみ取るためのテクニックなんです。動物王国にいる間、ぼくはムツさんの研究と経験に基づく高度な技術をたくさん学ばせていただきました」

6年前に別れを覚悟

 そんな畑さんの王国に悲劇が襲ったのは2007年。知人の提案で東京・あきる野市に移設した東京版「ムツゴロウ動物王国」が集客に失敗して経営破綻。保証人になった畑さんにも3億円の負債がのしかかった。

「もともと畑さんは乗り気ではなかったプロジェクトで、『追い剥ぎにあったようだ』と悔やんでいました。北海道に戻ってきた動物が、まともなエサを与えられずやせ細っていたことにも怒っていましたね。講演会やトークショーの営業などで全国を飛び回って8年近くかけてようやく返済の目処がついたとき、畑さんは80才を超えていました。バイタリティーにあふれたあの畑さんが、すっかり意気消沈していました」(前出・芸能関係者)

 以前は「死ぬまで動物王国を続ける」と意気込んでいた畑さんだったが、もはやその力は残っていなかった。古希を過ぎた頃、新聞に動物への愛が薄れたと書かれたこともある。

《熊とか馬とかを命がかかっちゃうくらい愛するんです。だけど70を超えたころから、ふーっとなくなったんですね》(毎日新聞2016年1月29日付夕刊)

 畑さんサイドはこの記事に抗議し、動物愛は薄れていないと主張したが、同じ頃、「ペット不可」の東京のマンションでひとり暮らしをする姿も目撃されていた。

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