PTPSとはこの、車両が信号に接近するとそれを感知して青信号の時間を延長したり、赤信号を青信号へと切り替えるなど、バスの優先走行を自動ではかるシステムだ。将来、東京BRTに専用レーンが設置されたときには、レーン内の違法走行車に対して自動で警告するといったことも検討されている。こうしたPTPSを導入することによって、BRTの運行がスムーズになるとされる。
東京BRTプレ運行二次と路線競合する新しい地下鉄
東京BRTは2020年10月からプレ運行(一次)を開始したが、前述のように専用道はなく、大半の車両が通常の路線バスと同じ一般道を走るタイプだった。そうしたことから、名ばかりBRTなどとも揶揄されていた。また、プレ運行(一次)は一路線しかなく、決して使い勝手がいいとは言えなかった。
2023年4月1日からスタートしたプレ運行(二次)では、路線数が「幹線ルート」「晴海・豊洲ルート」「勝どきルート」の3路線に増設。なかでも新橋―東京テレポートを結ぶ幹線ルートは、開発が著しい臨海部の主要交通機関になるとの期待が高まる。
しかし、東京都の小池百合子知事は2022年11月に東京駅―東京ビッグサイトを結ぶ約6.0キロメートル全7駅の臨海地下鉄計画を発表したばかりだ。臨海地下鉄の計画路線図を見ると、東京BRTとほぼ同じルートを走る計画になっている。
「プレ運行(二次)が始まった東京BRTは、2024年春から本格運行へと移行する予定です。一方、東京都が発表した臨海地下鉄は2040年までに開業することを目指しています。つまり、BRTが本格運行へと移行してから16年後には臨海地下鉄が開業し、両者が並存することになります」と説明するのは東京都都市整備局基盤部交通企画課の担当者だ。
東京BRTは京成バスが100パーセント出資した東京BRT株式会社が運行を担当しているが、もともとは東京都都市整備局が主導して誕生した経緯がある。
新たに発表された臨海地下鉄も東京都都市整備局が所管している。よく言えば共存もしくは競合ということになるが、見方によっては仲間同士で限られた乗客を取り合う、潰し合いのようにも映る。
「もともと臨海部は公共交通の空白エリアで、近年になって急速に開発が進み、人口が増えました。また、2020東京五輪の開催が決まったことをきっかけに開発が加速しています。それに伴って、公共交通の整備も必要になりました。そこで誕生したのが東京BRTです。東京BRTは、すでに地域住民の足として定着しつつあります」(同)
新型コロナウイルスの感染拡大により、地方都市の鉄道路線は需要が激減。多くの路線が廃線危機に陥っている。都市圏の鉄道路線は廃線危機とまではいかなくても、収支が悪化。苦しい状況が続く。