国内

岸田首相と尹錫悦大統領が参拝した広島「韓国人原爆犠牲者慰霊塔」秘話 李朝王族の被爆に、司令部は慌てふためいた

広島市内の平和記念公園内にある「韓国人原爆犠牲者慰霊碑」を訪問した岸田文雄首相と韓国の尹錫悦大統領

広島市の平和記念公園内にある「韓国人原爆犠牲者慰霊碑」を訪問した岸田文雄首相と韓国の尹錫悦大統領

 主要7か国首脳会議(G7サミット)の最終日となった5月21日、岸田文雄首相は韓国の尹錫悦大統領と広島市内の平和記念公園内にある「韓国人原爆犠牲者慰霊碑」を訪問した。両首脳がそろって花をたむける姿は、日韓の懸案だった徴用工問題が決着して以来、シャトル外交の復活など急速に進む関係改善の動きを象徴するものと言える。だが、そもそもなぜこの地に韓国人の慰霊碑があるのかはあまり知られていない。ジャーナリストの竹中明洋氏が李朝王家と在日韓国・朝鮮人被爆者の埋もれた歴史を紐解く。

 * * *
 多くの観光客が訪れる広島市中心部の原爆ドーム。爆発の威力を伝えるこの建物から元安川を挟んだ対岸にあるのが平和記念公園だ。公園内には犠牲者を悼む慰霊碑が数多くあるが、そのひとつに原爆で亡くなった朝鮮半島出身者を慰霊する碑がある。亀が高さ数メートルの黒御影石を背負った石碑の正面には「韓国人原爆犠牲者慰霊碑」と大書され、その脇に「李グウ(※グウは金へんに偶のつくり)公殿下外貮萬餘霊位」とある。この地で亡くなった朝鮮王公族のひとりだった李グウのほか2万人あまりの位牌という意味だ。

 1910年の日本による韓国併合の後、それまで朝鮮半島で500年にわたって続いた李氏朝鮮王家(1897年から1910年までは大韓帝国の皇帝)は、日本の植民支配によって朝鮮王公族とされた。王公族は日本の皇族に準ずるとされ、「殿下」の敬称をはじめさまざまな特権が認められる代わりに、東京で居住し帝国軍人となるよう求められたのである。

 李グウは李氏朝鮮の第26代目の王・高宗の五男である李コウの息子で1912年生まれ。10歳の時に日本に渡り学習院初等科に入り、陸軍士官学校を経て日本陸軍の将校となった。朝鮮王公族は、王世子だった李垠(りぎん)が日本の皇族である梨本宮家の方子と結婚したように、当時の「内鮮融和」の国策のもと日本人と政略結婚をさせられたが、李グウは朝鮮貴族の娘の朴賛珠と結婚している。朝鮮人としての強い民族意識を持ち、独立運動にもシンパシーを持っていたとされる。そのため、韓国では他の王公族が日本の植民地支配に協力したと人気がないなかで李グウの評価は高く、容貌も秀でていることから「オルチャン(=イケメン)王子」などと呼ばれたりする。

関連記事

トピックス

若手俳優として活躍していた清水尋也(時事通信フォト)
「もしあのまま制作していたら…」俳優・清水尋也が出演していた「Honda高級車CM」が逮捕前にお蔵入り…企業が明かした“制作中止の理由”《大麻所持で執行猶予付き有罪判決》
NEWSポストセブン
「正しい保守のあり方」「政権の右傾化への憂慮」などについて語った前外相。岩屋毅氏
「高市首相は中国の誤解を解くために説明すべき」「右傾化すれば政権を問わずアラートを出す」前外相・岩屋毅氏がピシャリ《“存立危機事態”発言を中学生記者が直撃》
NEWSポストセブン
3児の母となった加藤あい(43)
3児の母となった加藤あいが語る「母親として強くなってきた」 楽観的に子育てを楽しむ姿勢と「好奇心を大切にしてほしい」の思い
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
過去にも”ストーカー殺人未遂”で逮捕されていた谷本将志容疑者(35)。判決文にはその衝撃の犯行内容が記されていた(共同通信)
神戸ストーカー刺殺“金髪メッシュ男” 谷本将志被告が起訴、「娘がいない日常に慣れることはありません」被害者の両親が明かした“癒えぬ悲しみ”
NEWSポストセブン
ハリウッド進出を果たした水野美紀(時事通信フォト)
《バッキバキに仕上がった肉体》女優・水野美紀(51)が血生臭く殴り合う「母親ファイター」熱演し悲願のハリウッドデビュー、娘を同伴し現場で見せた“母の顔” 
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン
木瀬親方
木瀬親方が弟子の暴力問題の「2階級降格」で理事選への出馬が絶望的に 出羽海一門は候補者調整遅れていたが、元大関・栃東の玉ノ井親方が理事の有力候補に
NEWSポストセブン
和歌山県警(左、時事通信)幹部がソープランド「エンペラー」(右)を無料タカりか
《和歌山県警元幹部がソープ無料タカり》「身長155、バスト85以下の細身さんは余ってませんか?」摘発ちらつかせ執拗にLINE…摘発された経営者が怒りの告発「『いつでもあげられるからね』と脅された」
NEWSポストセブン
結婚を発表した趣里と母親の伊藤蘭
《趣里と三山凌輝の子供にも言及》「アカチャンホンポに行きました…」伊藤蘭がディナーショーで明かした母娘の現在「私たち夫婦もよりしっかり」
NEWSポストセブン
高石あかりを撮り下ろし&インタビュー
『ばけばけ』ヒロイン・高石あかり・撮り下ろし&インタビュー 「2人がどう結ばれ、『うらめしい。けど、すばらしい日々』を歩いていくのか。最後まで見守っていただけたら嬉しいです!」
週刊ポスト
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
《恐怖のマッサージルームと隠しカメラ》10代少女らが性的虐待にあった“悪魔の館”、寝室の天井に設置されていた小さなカメラ【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン