クリニックの求人欄に「医師、経験不問」という記述がある場合も怪しいとみていい。「美容医療の専門知識がなくても、医師なら誰でもいい」という姿勢が透けて見える。一方で、雑誌の取材を頻繁に受けているクリニックや、長年美容医療を専門にしているクリニックは信頼に足る場合が多いと、海野さんは言う。
「長く美容医療を行っているということは、それまで大きなトラブルが起きていないという証明です。また、SNSなどへの広告はお金をかければ出すことができますが、雑誌などの取材は本当に評判がよくなければ依頼されません」(海野さん・以下同)
クリニック選びは、決して「安さ」を最優先してはいけない。ここ数年「日本の3分の2の値段で手術を受けられる」などとして、韓国への“整形ツアー”が人気を集めているが、海外である以上、コミュニケーション不足が生じやすい。たとえどれほどの名医でも、たどたどしい英語や日本語でのカウンセリングでは、トラブルになることは想像に難くない。
“整形ツアー”で渡韓したとある女性は、カウンセリング内容をよく理解しないまま鼻の美容整形を受け帰国したところ、他人の軟骨を整形に用いる「寄贈軟骨」の施術をされていた。施術自体には危険性も違法性もなく韓国では一般的だが、日本では心理的な忌避感から、あまり行われないもの。後日、女性は細胞の拒絶反応により体調を崩した。だが、アフターフォローをしてくれるはずの医師は海の向こうなので、なすすべはなかったという。
「鼻の手術はただでさえ難易度が高く、日本国内でも術後の不満やトラブルが多いのに、“安いから”と値段を優先して海外で手術を受けるのは大きすぎる“賭け”だと感じます」
美容医療のトラブルは、医師や病院側の体制にずさんさなどの問題があるだけでなく、施術を受ける側に問題がある場合も決して少なくない。
「“脱毛後は紫外線を防ぐ”“飲酒は不可”“当日は入浴をしない”など、クリニックではカウンセリング時や施術後に必ず注意事項が告げられますが、それを守らずに肌トラブルや体調不良を起こす人もいます。施術後はクリニックの指示を守ることが重要です。
また、診察やカウンセリング時に『レーザーでシミを取りたい』『ハイフでたるみを治療したい』などと、治療法を自分で指定する必要はありません。何をどうしたいのか希望を聞いたうえで、症状や肌状態に合う治療法を提案するのは、医師の役割です。渡される問診票にも“○○の施術を受けたい”ではなく“△△の悩みをなくしたいので、治療法を医師と相談したい”と書くのがおすすめです」
※女性セブン2023年7月27日号