ビジネス

偽物ビジネスが急拡大 世界中で人気の高級ブランド「秋冬新作」がネットでさばかれる構造

冬の防寒着、そしてファッションアイテムとして人気が高いダウンジャケット。高級ブランド品であれば数十万円の価格(イメージ)

冬の防寒着、そしてファッションアイテムとして人気が高いダウンジャケット。高級ブランド品であれば数十万円の価格(イメージ)

 ブランドものの高級バッグや衣服などの違法コピー品は、現実には価値がないどころか、犯罪だと誰もが理解しているだろう。ところが、手軽に利用できるようになったネット通販やフリマサイト経由で、アパレルの違法コピー品が巷にあふれるようになってしまった。そして、フリマサイトなどで販売している“個人”は、手軽な副業だと思って委託された人たちだという。ライターの宮添優氏が、違法コピー品が日本で個人販売する人たちに託されるほど、偽物ビジネスとして広がっている様子を追った。

 * * *

 千葉県内にある某倉庫の小部屋に、年齢や格好、そして人種まで違う複数の人々が次々に吸い込まれていく。外気温は35度近く、みな短パンにTシャツの軽装だが、この小部屋にずらりと並んでいたのは、モンクレールやタトラス、デュベティカといった世界中で人気の高級ダウンジャケットなど、今年の「秋冬新作」とされる品々だ。来場者らは、商品の写真を撮ったり、同行者とあれこれ話したり、一見するとここは「アパレル関係の展示会」であり、来場者は「バイヤー」にも見える。しかし、並んだ「新作」の中には、筆者がブランドのホームページや、大規模ファッションショーを確認しても「見つからない」デザインの商品もあった。この謎の「展示会」について、日本国内の貿易関連会社に勤務する・小島竜也さん(仮名・30代)がため息交じりに説明する。

「要はパチもんです、全部偽物。偽物の展示会を毎年やってるんです。新作はほとんどあるし、ここで注文すれば、数週間後には商品が納品される。中国人が中国経由で日本に持ち込み、それを日本国内の日本人や外国人が買う。買うのは一般客ではなく、いわゆる卸業者で、そこからいろんなルートを通じて販売されるんです」(小島さん)

我々がやっているのはあくまでもビジネス

 ダウンジャケットなど正規品ならば数十万円はくだらない高額商品だけでなく、Tシャツやキャップなどのファッション小物まで、少なく見積もっても、それぞれ数十点から数百点は展示会に出ていたという。それらが本当に全部、偽物だというのか。会場から出てきたばかりの来場者を呼び止めると、まるで悪びれる様子もなく、こう答えた。

「あれ(偽物)でもいいというニーズがあるから、結局こういう(悪質な)業者も暗躍する。私は売れるなら何でも仕入れるし売る。もちろん、売るときは自分が逮捕されないようにやるし、そうでないと”ビジネス”として成立しません。我々がやっているのはあくまでもビジネスで、誰かを騙したい、金を奪いたいなんて感覚はありません」(偽物展示会の来場者男性)

 偽物で商売している時点で、誰かを騙したいわけではないと言われても説得力がないが、やましいことをしている人にありがちな怯えた雰囲気や警戒眼が全くないのは驚きだ。とはいえ、これほどにまで堂々と「偽物」を展示・販売しているわけだから、どこからか情報が漏れたりして警察が乗り込んでくる恐れはないのか。その可能性についても、この男性は笑顔で否定する。

関連キーワード

関連記事

トピックス

創価学会の「自民党離れ」は今年4月の衆院島根1区補選でも
【自公連立終焉へ】公明党の支持母体・創価学会の「自民党離れ」が進む 岸田首相の「解散やるやる詐欺」に翻弄され“選挙協力”は風前の灯火
週刊ポスト
殺人を犯すようには見えなかったという十枝内容疑者(Facebookより)
【青森密閉殺人】「俺の人生は終わった」残忍な犯行後にキャバクラに来店した主犯格の社長、女性キャストが感じた恐怖「怒ったり、喜んだり感情の起伏が…」近所で除雪手伝いの裏の顔
NEWSポストセブン
亡くなったことがわかったシャニさん(本人のSNSより)
《ボーイフレンドも毒牙に…》ハマスに半裸で連行された22歳女性の死亡が確認「男女見境ない」暴力の地獄絵図
NEWSポストセブン
長男・正吾の応援に来た清原和博氏
清原和博氏、慶大野球部の長男をネット裏で応援でも“ファン対応なし” 息子にとって雑音にならないように…の親心か
週刊ポスト
殺害された谷名さんの息子Aさん
【青森密閉殺人】手足縛りプラスチック容器に閉じ込め生きたまま放置…被害者息子が声を絞り出す監禁の瞬間「シングルで育ててくれた大切な父でした」
NEWSポストセブン
竹内涼真と
「めちゃくちゃつまんない」「10万円払わせた」エスカレートする私生活暴露に竹内涼真が戦々恐々か 妹・たけうちほのかがバラエティーで活躍中
女性セブン
史上最速Vを決めた大の里(時事通信フォト)
史上最速V・大の里に問われる真価 日体大OBに囲まれた二所ノ関部屋で実力を伸ばすも、大先輩・中村親方が独立後“重し”が消えた時にどうなるか
NEWSポストセブン
大谷が購入した豪邸(ロサンゼルス・タイムス電子版より)
大谷翔平がロスに12億円豪邸を購入、25億円別荘に続く大きな買い物も「意外と堅実」「家族思い」と好感度アップ 水原騒動後の“変化”も影響
NEWSポストセブン
被害者の渡邉華蓮さん
【関西外大女子大生刺殺】お嬢様学校に通った被害者「目が大きくてめんこい子」「成績は常にクラス1位か2位」突然の訃報に悲しみ広がる地元
NEWSポストセブン
杉咲花
【全文公開】杉咲花、『アンメット』で共演中の若葉竜也と熱愛 自宅から“時差出勤”、現場以外で会っていることは「公然の秘密」
女性セブン
京急蒲田駅が「京急蒲タコハイ駅」に
『京急蒲タコハイ駅』にNPO法人が「公共性を完全に無視」と抗議 サントリーは「真摯に受け止め対応」と装飾撤去を認めて駅広告を縮小
NEWSポストセブン
阿部慎之助・監督は原辰徳・前監督と何が違う?(右写真=時事通信フォト)
広岡達朗氏が巨人・阿部監督にエール「まだ1年坊主だが、原よりは数段いいよ」 正捕手復帰の小林誠司について「もっと上手に教えたらもっと結果が出る」
週刊ポスト