歌手としても活躍
代表作『水戸黄門』のロケで全国を回っていたのかと思えば…
1983年には『水戸黄門』の3代目格さんこと渥美格之進役に抜擢された。出演は17年間にもおよび、伊吹さんの最大の代表作となった。
「今も再放送されているので、ときどき見ますよ。自分を見ると『若ぇなあ』と思いますね(笑)。
最初に抜擢されたときの記者会見の後、2代目黄門役になった西村晃さんに『コーヒー飲もうよ』と誘われました。そのときは僕と黄門様役だけが交代したので、西村さんが『ここで視聴率が下がったら、何言われるかわかんないな』とおっしゃって、『初代の黄門様の東野英治郎さんは「カカカ」と笑っていたから、オレは笑い方をホからハに変えて「ホホホホホハハ」にしよう』とアイデアを出していました。みんな自分なりの色を出したい、と思っていたわけです」
助さん役は2代目の里見浩太朗と、3代目のあおい輝彦と組んで演じた。助さんは刀を使うが、格さんは素手で闘っていた。
「毎週、殺陣がありますが、何度もテストをすると嫌がられるんです。だから、手本を2回ぐらい見せてもらったら、その場ですぐに手順を覚えて演じていました。ええ、問題なくできましたよ。慣れですね。案外、得意なんです(笑)。
殺陣より印籠の出し方に神経を使いましたね。殺陣で身体を動かすのに、懐に忍ばせておいた印籠をスムーズに一発で出さなくてはいけないし、印籠には付け根といって紐がついているので、それがブランブラン揺れないように小指で引っかけるなど工夫して大変でした。印籠の持ち方も、きれいに見えるよう3本の指で持っていました」
なるほど。スムーズに印籠を出していたので気付かなかったが、工夫が必要なシーンだったのだ。
「『水戸黄門』は日本全国を漫遊して、その土地の地場産業をテーマにしている設定なので、『あちこち行って、美味しいものを食べられていいね』とよく言われるのですが、ほとんど京都とその近郊で撮影していたんですよ。僕らが各地へ出かけていくかわりに、毎回、各地の職人さんらに京都に来ていただいて、手元を演じていただいたり、教えてもらったりしていたんです」
