ライフ

クマの駆除にクレームを入れる類の「ダメな人」にならないために

苦情が殺到している町役場(時事通信フォト)

苦情が殺到している町役場(時事通信フォト)

 コミュニケーションのあり方が変化するなかで、社会的な規範も揺らいでいる。コラムニストの石原壮一郎氏が考察した。

 * * *
 世の中には反面教師があふれています。そりゃ、誰だって至らない点はありますが、それはそれ。ニュースを見ていると「そういう人にはなりたくないな」と思わされることが、しばしばあります。

 最近、強くそう思わされたのは、秋田県美郷町で住宅地にある作業小屋に立てこもっていたクマ三頭を駆除したら、町役場にクレームが殺到したというニュースをみたとき。クマの駆除が行なわれたのは、発見された翌日の10月5日。その直後から苦情が殺到し、翌6日の段階で「電話で450件、メールで160件」にのぼったとか。

 電話に出た職員に、いきなり「人でなし!」「地獄に堕ちろ!」と罵声を浴びせたり、30分以上もネチネチと抗議し続けたり……。10日の段階でも抗議の電話が続いていて、町役場は通常の業務に支障をきたすと悲鳴を上げているようです。

 当たり前ですが、駆除を決めた町と県だって、クマの命を軽んじているわけではありません。東北地方の各地では、クマに襲われて死亡したり大けがをしたりという被害が毎年数多くあります。麻酔で眠らせて山に戻しても(それ自体、二次被害の可能性がある難しい行為ですが)、また里に現われる可能性が大。クマの怖さを十分に知っているからこそ、住民の命を守るためには駆除しかないと苦渋の判断をしたわけです。

 もし目を吊り上げてクレームを入れた人たちの家の納屋にクマが立てこもったら、「かわいそうだから駆除しないでくれ!」と言い張れるのでしょうか。山道でクマとバッタリ遭って、通りすがりのハンターが銃を向けたら、「クマを撃たないで!」と銃の前に立ちはだかるのでしょうか。いや、きっとクレームを入れる人は、クマとは無縁の人生を送っていて、これからも無縁という前提があるから、無責任な抗議ができるんでしょうけど。

「クマを駆除した町にクレームを入れる」という行為には、いろんな種類の「人としてのダメ」が凝縮されています。いくつか並べてみましょう。

「独りよがりで的外れな『正義』を振り回すみっともなさを自覚していない」

「相手の状況に対する想像力の乏しさと視野の狭さを見事に露呈している」

「匿名という安全圏から、自分よりも“弱い立場”の相手に強気に出ている」

 こうした独善的で短絡的で平気で弱い者いじめができるタイプは、さまざまな場面で不愉快で迷惑な行動をとっているに違いありません。バスの中で赤ん坊が泣きだしたときに「うるさい!黙らせろ!」と叫ぶおじさんも、我が子の担任の先生に理不尽な要求を突き付けまくって休職に追い込むモンペなママも、同じダメさを持ち合わせています。

関連記事

トピックス

役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さんが今も築地本願寺を訪れる理由とは…?(事務所提供)
《笑福亭笑瓶さんの月命日に今も必ず墓参り》俳優・山口良一(70)が2年半、毎月22日に築地本願寺で眠る亡き親友に手を合わせる理由
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月20日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン