でも、住宅ローンが終わっていて、例えば来年から年金受給が始まるタイミングなら、「ちょっと使ってみようか」と考えてもいいのではないでしょうか。貯金が2000万円あるなら、憧れのスポーツカーを買ってみてもいい。豪華客船で行く世界一周に、500万円を使ったっていいでしょう。要は、「お金は使うためにある」という発想が大事なのです。

 ゴルフについて言えば、最近は価格破壊が進んでいることもあり、価格の安い曜日・時間帯を狙えば、そんなにお金のかかる趣味でもなくなっているようです。年金が始まる65歳までの間、あるいは住宅ローンが終わるまでの間、どうにか生活費をやりくりすることができれば、その後は貯金を使って楽しめばいい。

 定年時に住宅ローンが残っているなどの制約があると難しい面がありますが、それでも子供が巣立っているなど状況が許せば、家を売却してローンを完済し、差額で小さな家に住み替えることだって選択肢になります。土地価格が上がっている今はむしろチャンスです。

 さらに、中高年になるとリスクが高まるうつ病などメンタルヘルスに注意しつつ、働く元気さえあれば、低報酬だとしても65歳以上が活躍できる場はあり、収入も多少は得られるはずです。

 考え方次第で、それまでの生活とは違ういろんな将来を作り出すことができるのが、50代後半から60代前半という年齢なのです。(了)

 

和田秀樹医師が80代以降に心身の健康を維持するための「べからず集」を紹介

ベストセラー作家の和田秀樹医師が現役世代の悩みを吹き飛ばす「生き方」のコツを指南(撮影/三浦憲治)

【プロフィール】
和田秀樹(わだ・ひでき)/1960年大阪府生まれ。東京大学医学部卒。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、国際医療福祉大学大学院教授、ルネクリニック東京院院長。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。『80歳の壁』は2022年の年間ベストセラー総合第1位(トーハン・日販調べ)に。

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