自分でデザインをして20着程度作った
1人目の着物姿の女性は、ある呼出によれば「東京在住で、長く角界に貢献している人物」だという。九州場所の溜席は古くから持っている席で、観戦のために宅配便で30着近い着物と帯を送り、福岡国際センターに通っているとのことだった。
昨年の九州場所で本誌・週刊ポストが本人に取材のお願いをすると、当時は「お答えできません」とのことだったが、今場所は話を聞くと、「この席には思い出がある。これからも長く相撲を見守っていきたい。(東京から着物を送るのは)大変ですが、(相撲観戦には)着物が相応しい。白星を連想させる色の着物や帯を組み合わせている。着付けと髪を結うのは自分でやっています」との答えだった。
もう一方の1人の力士の着る浴衣の生地をワンピースに仕立てている女性にも、話を聞いてみた。5日目は紺色の浴衣地に白字で〈北勝富士〉とある。話を聞けば、宮崎・延岡に本社があり、福岡支社も持つ九州拠点の企業の社長夫人だという。九州場所中は、福岡に15日間泊まり込むとして、こう話した。
「昨年は15日間、着物で観戦したんですが、今年は贔屓のお相撲さんからいただいた浴衣地で20着程度ワンピースを作ったんです。これまでは主人の浴衣を作っていたんですが、九州場所は冬なので着られない。そこで私のワンピースを浴衣地で作って、裏地をつけて観戦しようかなと思ったんです。今日は少し寒いです(苦笑)」
初日は〈貴景勝〉、2日目は〈大栄翔〉、3日目は〈遠藤〉だった。
「自分でデザインしたものを洋服屋さんに仕立ててもらうのですが、できるだけ正面から見て四股名が胸元に見えるようにしています。着物より高くつきますが、土俵上のお相撲さんにも見て喜んでもらえるのかなと思っています。初日の貴景勝の浴衣地は、最初に幕内に上がった時のものですが、四股名が小さくて柄しか見えなかった(苦笑)。千秋楽は鶴と龍の柄が入った鶴竜さん(元横綱、現・鶴竜親方)の浴衣地のワンピースを着る予定です」
土俵では熱戦が続くが、桟敷に座る女性たちが大相撲の盛り上がりに一役買っているようだ。