「年寄名跡不足」という角界の構造問題
こうした騒動の背景には、「70歳までの再雇用制度による年寄名跡不足」という角界の構造問題も関係しているだろう。相撲担当記者が言う。
「陸奥親方は65歳定年で退職するなら『陸奥』の年寄名跡と部屋を鶴竜親方が継ぐといった選択肢も出てくるかもしれないが、70歳までは再雇用で協会に残る意向とされるので、そうはならない」
現在66歳の立田山親方も、再雇用の期限である70歳まであと3年半ある。一方、鶴竜親方は横綱経験者にのみ認められる現役時代の四股名で5年間は協会に残れるという特例を使っている状況だが、その期限まで2年3か月。年寄名跡探しに奔走しなくてはならない状況だ。
「最終的には鶴竜親方が、立田山親方から株を譲ってもらうのではないかとみられている。立田山親方が70歳になる1年3か月前に鶴竜親方の特例の期限がきてしまうので、譲渡に際して1年3か月分の参与の給料にあたる額が上乗せされるのではないか。鶴竜親方には内弟子もいるので、将来的には独立するつもりでしょう。
一方、陸奥親方にとって愛弟子である霧島は、横綱に昇進できれば引退後も年寄名跡なしで5年間は協会に残れる特例が使える(大関経験者なら3年)。“5年特例”の間に陸奥親方が70歳で退職を迎えるので、霧島がそこで『陸奥』を継げば、部屋を再興するシナリオも考えられるのではないか」(前出・相撲担当記者)
部屋も所属する親方、力士の先行きも、混沌とするばかりのようだ。
※週刊ポスト2023年12月22日号