松野博一・前官房長官(時事通信フォト)

松野博一・前官房長官(時事通信フォト)

 日本医師会は、「医療従事者の賃上げが他の業界より低い」と診療報酬の引き上げを主張。

 それに対して、財務省が全国の医院・クリニックなど診療所の2022年度の平均収益は1億8800万円と2020年度から2000万円増加し、利益剰余金も1900万円増えている──というデータを公表して「(診療報酬を上げなくても)賃上げはできる」と反論。政府の財政制度等審議会財政制度分科会も、「医療機関にコロナ補助金とコロナ特例診療報酬で2022年度だけで4兆円が支援された」と指摘して診療報酬はマイナス、とくに診療所の診療報酬を「5.5%程度引き下げる」との意見を政府に答申した。

 危機感を強めた医師会側は自民党に猛烈なロビー活動を展開し、自民党では「国民医療を守る議員の会」が「診療報酬の大幅引き上げ」を決議。岸田派、茂木派の議員たちが岸田首相に申し入れ、最終的に医師会の要求通り「診療報酬本体部分」の引き上げで決着したのは前述の通りだ。日本医師会の松本吉郎・会長は「率直に評価をさせていただきたい」と歓迎した。

 政治ジャーナリストの野上忠興氏が語る。

「診療報酬改定は揉めれば揉めるほど自民党にはおいしい。改定率はあらかじめ総理が決めているが、自民党議員は議連の決議や陳情を派手にやって『オレたちはこんなに貢献した』と医師会にアピールする。いわば政治パフォーマンスショーです。その貢献度合いが献金額に反映される」

 前回の医師会巨額献金に味を占めた岸田首相が、今回は主流3派の有力議員たちに“どんどんアピールして献金を増やしてもらえ”と演技させたという指摘だ。

 医師会利権に食い込みたくても検察捜査で身動きが取れなかった安倍派の幹部たちは指をくわえて見ているしかなかった。

疑惑を飛び火させる

 自民党最大の資金源を握った岸田首相は、安倍派にさらなる追い討ちを掛けた。

 岸田首相と麻生太郎・副総裁、茂木敏充・幹事長らは検察捜査で安倍派議員が立件された場合を想定し、“安倍派抜き”の党役員会で派閥活動の縮小など政治改革を議論する新組織立ち上げを“新年の初仕事”に掲げた。狙いは最大派閥・安倍派が立ち直れないように解体することにある。

「そこまでコケにするのか」と、安倍派は本気で逆襲の準備を始めた。

 安倍派関係者が不気味な言い方をする。

「岸田がこっちを潰す気なら、こちらも遠慮はしない。野党は通常国会が始まれば、裏金問題で岸田政権を追及しようと手ぐすねひいて材料を集めている。

 そこで野党をけしかけて岸田自身の医師会献金問題などもセットで追及させ、疑惑を主流3派にも飛び火させて大炎上させる。うちの派閥には安倍政権時代に身体検査のために集めた各派閥の議員のスキャンダル情報がある。材料ならいくらでも提供できる」

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