ビジネス

SL復活で地域振興 岐阜の山間を走る明知鉄道の挑戦

恵那駅に停車中の明知鉄道・じねんじょ列車(2006年撮影:小川裕夫)

恵那駅に停車中の明知鉄道・じねんじょ列車(2006年撮影:小川裕夫)

 世界のエネルギーの主役が石炭から石油へと移りつつあった1960年代、日本国有鉄道(現在のJR)は蒸気機関車 (Steam Locomotive = SL)を次々と廃止、1975年12月に通常の営業運転が終え、以後、日本ではSLといえば特別なときに運行される列車となっている。その50年以上前に製造されたSLを2両も譲渡されたのが、岐阜県の恵那市や明知鉄道株式会社などで組織されるSL復元検討委員会だ。ライターの小川裕夫氏が、恵那から明智までの山あいを走る地方鉄道が、維持も管理も手間がかかるSLの旅客運転によって目指すものについてレポートする。

 * * *
 2023年11月、岐阜県の恵那市・中津川市を走る明知鉄道は、沿線自治体や地元経済団体・住民とともにSL復元検討委員会を設立した。

「1973年まで明知鉄道ではSLが運行され、引退後に恵那市内の明智小学校や中央図書館で保存・展示されていたのです。市は、それらSLをJR東海から無償譲渡してもらい、現在は明知鉄道の明智駅構内で運転体験を実施しています。SL復元検討委員会では、そうした運転体験ではなく、実際にSLの旅客運転を目指しています」と話すのは、SL復元検討委員会で中心的な役割を担う恵那市の交通政策課担当者だ。

 昨今、ローカル線をとりまく状況は厳しさを増している。鉄道が生き残るのには、何よりも利用者を増やさなければならない。利用者を増やすための施策はさまざまだが、蒸気機関車(SL)をはじめとする観光列車の運行に活路を見出そうとする鉄道会社は少なくない。

訴求力・集客力の低下と費用問題

 SLは1960年代まで全国各地で走っていた。日本国有鉄道(国鉄)が動力の近代化に取り組んだことにより、地方で走っていたSLはディーゼル車やディーゼル機関車、都市圏では電車や電気機関車へと置き換えられていった。

 黎明期から日本の鉄道を支えてきたSLは、国鉄の動力近代化によって次々と姿を消す。その過程で起こったのが、1970年代のSLブームだった。

 1970年代のSLブームを体験した世代は、いまや50代から70代になっている。こうした世代にSL人気は支えられてきたが、静岡県の大井川鉄道をはじめJR西日本の山口線、JR東日本の磐越西線などでSLは定期的に運行され、さらに2017年には東武鉄道がSL大樹の運行を開始。これら各地でSL運行が続けられていることにより、ちびっ子からも絶大な人気を誇り、世代を問わず人気コンテンツとして認識されるようになっている。

関連キーワード

関連記事

トピックス

日高氏が「未成年女性アイドルを深夜に自宅呼び出し」していたことがわかった
《本誌スクープで年内活動辞退》「未成年アイドルを深夜自宅呼び出し」SKY-HIは「猛省しております」と回答していた【各テレビ局も検証を求める声】
NEWSポストセブン
12月3日期間限定のスケートパークでオープニングセレモニーに登場した本田望結
《むっちりサンタ姿で登場》10キロ減量を報告した本田望結、ピッタリ衣装を着用した後にクリスマスディナーを“絶景レストラン”で堪能
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん(時事通信フォト)
笹生優花、原英莉花らを育てたジャンボ尾崎さんが語っていた“成長の鉄則” 「最終目的が大きいほどいいわけでもない」
NEWSポストセブン
実業家の宮崎麗香
《セレブな5児の母・宮崎麗果が1.5億円脱税》「結婚記念日にフェラーリ納車」のインスタ投稿がこっそり削除…「ありのままを発信する責任がある」語っていた“SNSとの向き合い方”
NEWSポストセブン
出席予定だったイベントを次々とキャンセルしている米倉涼子(時事通信フォト)
《米倉涼子が“ガサ入れ”後の沈黙を破る》更新したファンクラブのインスタに“復帰”見込まれる「メッセージ」と「画像」
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん
亡くなったジャンボ尾崎さんが生前語っていた“人生最後に見たい景色” 「オレのことはもういいんだよ…」
NEWSポストセブン
峰竜太(73)(時事通信フォト)
《3か月で長寿番組レギュラー2本が終了》「寂しい」峰竜太、5億円豪邸支えた“恐妻の局回り”「オンエア確認、スタッフの胃袋つかむ差し入れ…」と関係者明かす
NEWSポストセブン
2025年11月には初めての外国公式訪問でラオスに足を運ばれた(JMPA)
《2026年大予測》国内外から高まる「愛子天皇待望論」、女系天皇反対派の急先鋒だった高市首相も実現に向けて「含み」
女性セブン
夫によるサイバーストーキング行為に支配されていた生活を送っていたミカ・ミラーさん(遺族による追悼サイトより)
〈30歳の妻の何も着ていない写真をバラ撒き…〉46歳牧師が「妻へのストーキング行為」で立件 逃げ場のない監視生活の絶望、夫は起訴され裁判へ【米サウスカロライナ】
NEWSポストセブン
シーズンオフを家族で過ごしている大谷翔平(左・時事通信フォト)
《お揃いのグラサンコーデ》大谷翔平と真美子さんがハワイで“ペアルックファミリーデート”、目撃者がSNS投稿「コーヒーを買ってたら…」
NEWSポストセブン
愛子さまのドレスアップ姿が話題に(共同通信社)
《天皇家のクリスマスコーデ》愛子さまがバレエ鑑賞で“圧巻のドレスアップ姿”披露、赤色のリンクコーデに表れた「ご家族のあたたかな絆」
NEWSポストセブン
硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将(写真/AFLO)
《戦後80年特別企画》軍事・歴史のプロ16人が評価した旧日本軍「最高の軍人」ランキング 1位に選出されたのは硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将
週刊ポスト