父が営む小さな自転車店・木梨サイクルで育ち、帝京高校卒業後に就職するも半年もせずに退職。高校の同級生である石橋貴明と「とんねるず」を結成し、お笑い界に殴り込んだ。
師匠やプロダクションという後ろ盾もなく、若さと破天荒なアドリブで快進撃を続けたコンビは、「部活芸」と揶揄されながらもバブルの寵児としてゴールデン番組で高視聴率を連発し、東京ドームでコンサートを開催するまでに成り上がった。時代に合致した才能ゆえのサクセスストーリーに見えるが、本人は「純粋な気持ち」で突き進んできた賜物だと振り返る。
「『ノリさんは特別だからうまくいったんだ』と言う人がいるけど、それはどうかなぁ。“こうなりたい”“こうしたい”と熱く強く思い、純粋な気持ちのまま、夢中でのめりこんできたからだと、俺は本気で思っている」
「これまで支えてくれたすべての人に感謝したい」
還暦を過ぎて胸に抱くのは、「これまで支えてくれたすべての人に感謝したい」という思いだ。
「一緒に番組を作ったスタッフだけでなく、俺たちを受け入れて、笑って、一緒に昂って、ノッてくれたワンフー(ファン)の人たちも俺の陣営です。そんな“とんねるず世代”に感謝しているし、恩返しがしたいね」
その気持ちを込めた書籍『みなさんのおかげです 木梨憲武自伝』も先ごろ上梓した。いくつになっても歩みを止めない男に、次なる目標を聞いてみた。
「やりたいことはいっぱいあるよ。貴明やなるさんとも一緒に仕事をしたいし、若いアーティストたちともコラボしたい。気持ち的には“永遠の小学校3年生”だもんで、生涯プレーヤー、生涯コーディネーターとして、面白いことをどんどんやっていきたいね」
“みなさんのおかげです”という感謝の心とともに、ノリさんの大冒険はどこまでも続いていく。
【プロフィール】
木梨憲武(きなし・のりたけ)/1962年生まれ、東京都出身。1980年に高校の同級生だった石橋貴明と「とんねるず」を結成し、『お笑いスター誕生!!』(日本テレビ系)で一躍スターへ。バラエティ番組への出演だけでなく、歌手やアーティスト、俳優などとしても活動している。1月26日には、新刊『みなさんのおかげです 木梨憲武自伝』が発売され話題に。
文/池田道大
※週刊ポスト2024年2月9・16日号