幕張新都心の玄関口となるJR京葉線海浜幕張駅の1日あたり乗降客数は2019年まで13万人超だった。コロナ禍以降は10万人を下回っている(時事通信フォト)

幕張新都心。その玄関口となるJR京葉線海浜幕張駅の1日あたり乗降客数は2019年まで13万人超だった。コロナ禍以降は10万人を下回っている(時事通信フォト)

「蘇我駅から通勤快速に乗れば、次の停車駅は都内の新木場駅で、その間にある県内の駅は全て通過なんです。そのおかげで、身動きできないほど混むこともなく、都内まで1時間以上かかる場所からでも、なんとか通勤できました。以前住んでいた都内に比べれば生活環境もよく、子供達も土地を気に入ったので”ここを実家にしよう”と新築の戸建ても買いました。なのに、次のダイヤ改正で、通勤に1時間半以上かかるようになる。そして、混みやすい各駅停車に乗るしかなくなります。夫も都内勤務のため同じように悩んでいます。買ったばかりの家も、都内へのアクセスが悪くなり、資産価値が減るんじゃないかという心配までする始末です」(藤原さん)

「なぜ家賃の安い遠方の人たちだけが優遇されてきたのか」

 JR側は、コロナ禍前と比べ利用客が3割程度少ない利用状況を「改正」の根拠としているが、あまりに反発が多かったからか、早朝帯の東京方面上り快速電車2本のみを継続して運行すると発表した。だが快速電車は、通勤快速に比べ停車駅数は7駅も増える上、千葉県内の主要駅を出発する時刻が朝6時台と早すぎて、利用できないユーザーも多いのだ。したがって、通勤快速ユーザーたちからは、廃止が覆らない今なお非難の声が上がり続けている。一方、京葉線ユーザーでも、通勤快速を利用しない人々たちからは、逆に「改正」を歓迎する声もある。

 千葉県習志野市のJR海浜幕張駅を利用し、毎朝都内の職場まで京葉線で通っている公務員の高梨翔さん(仮名・20代)は、海浜幕張駅には止まらない通勤快速電車の存在に疑問を持っていた1人だ。

「通勤快速電車が遅延すると、私が乗る各駅停車まで遅延するし、途中駅で通勤快速や快速電車の通過待ちに何分もかかっていました。この駅(海浜幕張駅)は、沿線の中でも重要な駅でしょう。大型商業施設にも近く、付近の再開発も進んで住人も急増しているんです。それでも止まらない電車なんか必要ない、というのが本音です。都心に近ければ近いほど家賃も高くなるのに、なぜ家賃の安い遠方の人たちだけが優遇されてきたのかと」(高梨さん)

 沿線ユーザー間でも、利用駅によって今もダイヤ改正に対する評価は真っ二つに割れているようにも見える今回の事態。京葉線と同じ千葉東京間を別ルートで走るJR総武快速線でも、減便に伴う利便性低下を防ぐという理由から、2022年3月に朝夕に設定されていた通勤快速は廃止になっていた。国鉄時代を経験し、5年ほど前に退職した千葉県在住の元JR社員・塚田治さん(仮名・70代)は、経営の合理化や都心に近い沿線ユーザーの声ばかりが拾われ、他地域のユーザーが不利益を被るパターンが今後は増えていくだろうと話す。

「今回の京葉線のように、同じ路線内であっても便利になる区間と不便になる区間が出ることが普通になってくるでしょう。特に千葉は、首都圏とはいえ千葉の先がない。神奈川はその先に静岡や西日本があるし、埼玉は東北への玄関口なわけです。東京直通の電車でも、千葉市以西、もしくは以南のように利用客が少ないとみなされた地域では、改正の名の下に整理が進み、そこで生まれた余裕は、都心駅やその利用客に振り分けられる。田舎に住んでいると損をする、というようなことになるかもしれません」(塚田さん)

 話題の京葉線は東京駅から東京湾を沿うように走り、千葉市の南側にある蘇我駅で外房線と内房線へと接続する。前出の松田さんの最寄り駅である大網駅は外房線で、蘇我駅から房総半島を横断して太平洋沿いを南下し内房線へと接続、再び蘇我駅へとつながる。確かに、塚田さんが言うように「千葉の先がない」。

 都心、都会に暮らしているとなかなか気がつきにくいが、地方や僻地では、とっくの昔に列車や路線バスが廃止され、陸の孤島があちこちに出現している。しかし今回、都心に住んでいればそんな心配は無用だろうと思われていたところに、一部利用者たちにとっては「インフラ」を取り上げられるような事態が襲いかかっている。人口減少や都心回帰が進み、こうした光景が珍しくなくなる日も近いのか。

関連記事

トピックス

元交際相手の白井秀征容疑者(本人SNS)のストーカーに悩まされていた岡崎彩咲陽さん(親族提供)
《川崎・ストーカー殺人》「悔しくて寝られない夜が何度も…」岡崎彩咲陽さんの兄弟が被告の厳罰求める“追悼ライブ”に500人が集結、兄は「俺の自慢の妹だな!愛してる」と涙
NEWSポストセブン
グラドルから本格派女優を目指す西本ヒカル
【ニコラス・ケイジと共演も】「目標は二階堂ふみ、沢尻エリカ」グラドルから本格派女優を目指す西本ヒカルの「すべてをさらけ出す覚悟」
週刊ポスト
阪神・藤川球児監督と、ヘッドコーチに就任した和田豊・元監督(時事通信フォト)
阪神・藤川球児監督 和田豊・元監督が「18歳年上のヘッドコーチ」就任の思惑と不安 几帳面さ、忠実さに評価の声も「何かあった時に責任を取る身代わりでは」の指摘も
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《ハワイで白黒ペアルック》「大谷翔平さんですか?」に真美子さんは“余裕の対応”…ファンが投稿した「ファミリーの仲睦まじい姿」
NEWSポストセブン
赤穂市民病院が公式に「医療過誤」だと認めている手術は一件のみ(写真/イメージマート)
「階段に突き落とされた」「試験の邪魔をされた」 漫画『脳外科医 竹田くん』のモデルになった赤穂市民病院医療過誤騒動に関係した執刀医と上司の医師の間で繰り広げられた“泥沼告訴合戦”
NEWSポストセブン
被害を受けたジュフリー氏、エプスタイン元被告(時事通信フォト、司法省(DOJ)より)
《女性の体に「ロリータ」の書き込み…》10代少女ら被害に…アメリカ史上最も“闇深い”人身売買事件、新たな写真が公開「手首に何かを巻きつける」「不気味に笑う男」【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン
2025年はMLBのワールドシリーズで優勝。WBCでも優勝して、真の“世界一”を目指す(写真/AFLO)
《WBCで大谷翔平の二刀流の可能性は?》元祖WBC戦士・宮本慎也氏が展望「球数を制限しつつマウンドに立ってくれる」、連覇の可能性は50%
女性セブン
「名球会ONK座談会」の印象的なやりとりを振り返る
〈2025年追悼・長嶋茂雄さん 〉「ONK(王・長嶋・金田)座談会」を再録 日本中を明るく照らした“ミスターの言葉”、監督就任中も本音を隠さなかった「野球への熱い想い」
週刊ポスト
12月3日期間限定のスケートパークでオープニングセレモニーに登場した本田望結
《むっちりサンタ姿で登場》10キロ減量を報告した本田望結、ピッタリ衣装を着用した後にクリスマスディナーを“絶景レストラン”で堪能
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん(時事通信フォト)
笹生優花、原英莉花らを育てたジャンボ尾崎さんが語っていた“成長の鉄則” 「最終目的が大きいほどいいわけでもない」
NEWSポストセブン
日高氏が「未成年女性アイドルを深夜に自宅呼び出し」していたことがわかった
《本誌スクープで年内活動辞退》「未成年アイドルを深夜自宅呼び出し」SKY-HIは「猛省しております」と回答していた【各テレビ局も検証を求める声】
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん
亡くなったジャンボ尾崎さんが生前語っていた“人生最後に見たい景色” 「オレのことはもういいんだよ…」
NEWSポストセブン