ビニールハウスという限られた環境で打撃練習に打ち込む主将の中村航太郎

ビニールハウスという限られた環境で打撃練習に打ち込む主将の中道航太郎 (撮影/藤岡雅樹)

ふるさと納税を財源に支援

 別海に強風が舞う2月下旬、練習の取材を予定していたところ「送迎バスが運行できないので中止です」と部長から連絡が入った。近年、真冬の別海では雪の吹き溜まりによる交通事故が多発していて、別海高校もたびたび臨時休校となる。予定を変更し、向かったのは二塁手・千田涼太の実家が営む千田牧場だ。

 1万4200人の町民に対して約8倍にあたる11万頭の乳牛が飼育され、生乳生産量日本一を誇る別海らしく野球部員でも6家庭が酪農を営む。3番を任される打線のキーパーソンである千田は、この3月に同校を卒業した兄・晃世とホルスタイン約100頭のいる牛舎で素振りをすることもあった。父・和幸が言う。

「甲子園には開会式から試合当日まで滞在します。その間、牛舎は酪農ヘルパーさんにお願いすることになる。酪農家の部員のところはみな、なんとかヘルパーさんの確保ができてホッとしています」

 翌朝、向かったのは別海の中心部からおよそ27km離れた尾岱沼の漁港。ホタテや秋味(秋に捕れる鮭)の漁師である中道大輔は、主将を務める航太郎の父で、父母会長を務める。

「(出場が決まっていない)昨年12月からJALのチャーター機で甲子園に向かう応援ツアーの準備をしていましたが、1月2日に起きた事故の影響で難しくなった。うちは自家用車で苫小牧まで行き、苫小牧東港から約20時間の航路で敦賀へ。そこから陸路で甲子園に入ることにしました」

 酪農と漁業が地場産業となる別海ではふるさと納税の返礼品が好評だ。21世紀枠での出場が決定すると、役場ではふるさと納税の積立金を財源とした総額5000万円の助成を決定した。市町村からの助成金は一般的に300万円が相場で、1990年夏に中標津高校が出場した時の1000万でさえ全国では異例だった。その内訳を町役場担当者が説明する。

「21世紀枠の候補だった12月の段階で監督からの要望があり、(牛の品評会や祭りで利用されてきた)別海町コミュニティセンターを室内練習場として提供することになった。防球ネットやバッティングマシン等も整備する必要があった。そこでまず500万円の助成が決まりました」

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