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血縁や法制度ではなく「気持ち」でつながる「拡張家族」はありか?作家・甘糟りり子さんが考える「家族」の形

家族の形は時代と共に変化してきている

家族の形は時代と共に変化してきている(写真/イメージマート)

 時代とともに「家族」の形もさまざまに変わってきている。そんななか注目を集めているのが「拡張家族」という新しい家族のあり方だ。人気シリーズの第三弾『私、産まなくていいですか』を3月に上梓した作家の甘糟りり子さんが、同著の中でもテーマにした「拡張家族」についての見解を綴る。

 * * *
 私が「拡張家族」という言葉を知ったのは『GQ JAPAN』の記事だった。四年半前のことである。なんでも、四十人ほどのクリエーターたちが渋谷の新しいシェアハウスで暮らしているが、単なる同居人ではなくお互いを「家族」という認識で生活している、血縁や法制度ではなく、宗教や政治的結び付きでもないこうしたつながりを「拡張家族」と呼ぶ、そんな記事だった。

 思わず膝を叩きたくなった。友人にもこういう生き方の人が何人かいた。彼ら彼女らのつながりをなんと呼べばいいのだろうと考えあぐねていた。例えば、離婚した後でも元夫の母親と暮らし、幼い子供の子育てを分担している女性。例えば、大きなマンションに住み、何人かの友人と共同生活をして、子育てやペットの面倒、家の用事を共有している出張の多い女性。私は海のそばで育ったが、子供の頃はサーファーが何人か共同生活しているアパートがあった。同じ屋根の下で暮らし、生活の細部を分担し合っている。それらはみんな、拡張家族と呼べる。父がいて母がいて子供がいて、というだけが「家族」ではない。

「一人」か「結婚」かで悩まなくてもいいと思うと心強い

 この言葉を知って、そういう生き方もありだなあと思うようになった。核家族化、晩婚化、そして少子化。昭和の頃よりも生活の単位はぐっと小さくなっている。そろそろ家族というものの概念を広げる時期に来ているのではないだろうか。

 先日、『私、産まなくていいですか』という小説集を刊行した。その中の一編に「拡張家族」というタイトルをつけた。離婚した主人公が義母や友人たちと暮らす物語だ。友人たちのエピソードが元になっている。すると、忙しく働く女性たちから「こんな生き方もあると知るだけで安心できた」「これでいいんだよね、と思った」というような反応をいくつかもらった。ずっと一人で生きていきたいわけではないけれど、恋愛して(今ならティンダーとかで相手を探して)、きっちり手続きを踏んで結婚して、(もしかしたら不妊治療をしたりもあって)妊娠&出産をするかはわからない。後者を選び取らなくても、拡張家族というスタイルもある。「一人」か「結婚」かで悩まなくてもいいと思うと心強いのかもしれない。

『私、産まなくていいですか』は「産む産まない」シリーズの第三弾(文庫書き下ろし)だ。十年前に第一弾の『産む、産まない、産めない』を出した時、主な登場人物は不妊治療に悩む女性たちだった。「タイトルを見て手に取ったのに、産めない人ばかりで産まない人が出てこない」といった批判をいくつか受けた。ぐさっときた。エラソーにあれこれ文章を書いているけれど、結局私も自分のことを棚にあげ、「女性はみんな産みたいもの」というあいまいな先入観で物語を作っていたのだと落ち込んだ。今回は意識的に産まない女性を登場させて物語を作った。

 自分を含めて、私の周りには産まない女性はたくさんいる。絶対に子供は欲しくないと宣言している人もいれば、特に興味はないという人、妊娠しちゃったら産んでもいいけれど、不妊治療をしてまで欲しくないという人など、さまざま。白か黒ではなくグラデーションだ。欲しい気持ちがなくはないけれど、できなかったらそれはそれでいいという人も「産めない」ではなく「産まない」といっていいと思う。産めない人の葛藤や産んだ後の苦労は度々物語になるが、産まない女性の声はなかなか聞こえない。だから、取材を重ねて書いてみた。

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