自分に酔ってるんだろうね
そして4月5日、あらためて会見した川勝知事は一転して発言を撤回した。
〈生業の違いを言ったものです。しかしながら、職業差別と捉えられるかねない表現だというふうになりまして、そしてましてこれが職業差別であるというふうにいま、ご理解されている人が急に増えてまいりました。これは不正確で、そういうご理解をされるようになるならば、これは、そういうご理解をしていただくのは本意ではございませんので、そのくだりを削除いたしまして撤回いたします〉
〈職業差別と捉えかねないのを、捉えた方、がいらして、それで怒ってらっしゃる方がいらっしゃる。不愉快な思いをさせたことに対しましては、まことに申し訳なく思っておりまして、心からお詫びを申し上げます。なりわいの違いを申し上げたつもりでしたが、説明は通じないというふうに言われましたので、通じないのであれば、そのことは申し上げないと。しかし職業差別ではありませんので、職業差別と捉えかねないところは、全部削除して撤退いたします〉
そして4月10日、川勝知事は辞表を提出した。辞任会見では理由を「リニア問題」として、結局は最後まで発言の責任をとる形は回避した。また会見に先立ち記者団の前で、
〈「散りぬべき 時知りてこそ 世の中の 花も花なれ 人も人なれ」細川ガラシャです〉
と記者に向かって笑みを浮かべ、ガラシャ(明智光秀の娘、玉の洗礼名。東軍、細川忠興の妻。関ヶ原の前哨戦において西軍、石田三成の人質要求を拒否して義死)の辞世の歌を一首詠んだ。
これについては別の元ベテラン議員で短詩文学にも詳しい方に話を聞くことができた。
「細川護熙もこの歌を詠んだ。まあ彼は遠い親戚(細川氏の末裔)だからな。あと小泉純一郎か。自分に酔ってるんだろうね。そういう人ということだ」
あくまで憶測でしかない話かもしれないがいきなり詠まれても、ましてガラシャの生涯と最期を顧みても疑問でしかない。ましてこれは知事の辞任会見である。
「川勝氏は切り抜きと言っていたが、旧民主党系、反自民ということでむしろこれまで忖度されていたように思う。むしろ甘やかしが過ぎた」
これは本稿のお二人以外にも言及する有識者もあったが「リニア憎し」でその他をないがしろとまではいかないまでも、リニア反対という錦の御旗があれば何でもいいが常態化してしまったことも要因にあるように思う。手段の目的化というべきか。リニア問題の是非は論じるべきだが15年という川勝県政で何を生み出したかといえば、その年月の長さに比すれば「労多くして功少し」に結果的になってしまった。川勝知事の理想のようにはいかず、その焦りもあったのではないか。これもまた、支持者も含めた多くの関係者の指摘する通りである。