淡島。富士山も見える絶景のロケーションだ
「動物の所有権がない」「従業員が大量解雇」置かれた現状
しかし、これで全ての問題がクリアされたわけではなく、「“ゼロから1へ”どころか、“マイナスからのスタート”です」と表情を曇らせる。
同水族館は債権者との間に負債を抱えており、複数の裁判に発展していた。2月に東京高裁から1億6000万円超の支払い命令を受けている。今村氏はこうした前オーナーが抱えた負債を全部負担する意志を表明している。
「いま、一番大切な動物たちの権利が破産管理人にある状態です。4月17日に静岡地裁で判決が下されたのですが、和解に向けて話し合いの期間をいただくために控訴しました。動物たちを法的に守ると言ったらあれですけど、従業員が大切に育ててきた“我が子”のため、なんとか話し合いで妥協点を見つけたい」
その従業員も厳しい状況に置かれている。同園は繁忙期にはアルバイトも含め45人が在籍していたが、1月の閉園を受けて20名近くが解雇され、現在の従業員は11名。ボランティアで働く人もいる。実施したクラウドファンディングで1000万円近くが集まり、動物のエサ代はなんとか賄えているといったのが現状だ。
「解雇された方々に説明会を開いて、戻ってきて欲しいということは伝えました。従業員の多くは『ラブライブ』で有名になる前から働いていて、魚や動物を愛している人ばかりですが、やっぱり生活していかなきゃいけないので、もうすでに別の会社に就職してしまった人もいます。これからは個別に連絡して相談していこうと思っています」
現在、働く11人の従業員では動物の世話で手一杯だ。今村氏は「施設は老朽している部分こそあれど、運営に支障はないと思っています。閉園中に生い茂った雑草などあっちこっちで荒れ放題。細かい清掃まで対応できていません」とも語る。
裁判、従業員、施設の整備──課題は山積みだが、債権者らからの申立てなどがない限り「7月再開」を後ろ倒しにする予定はないという。
「これは私の力不足で情けなくもあるのですが、金銭的な部分の限界がこの6月でして。営業を再開して皆さんの力をお借りしながら立て直していきたいと考えています。もつれた糸を少しずつほどきながら営業していく。見切り発車と言われたら、それは申し訳ない限りです」
最後に再開後の目標を問うと、目に涙を浮かべながらこう口にした。
「まず、あわしまマリンパークを“普通に戻す”ということを目標にしていきます。地域の人が『今日もやっているね』と言ってくれるように全力で頑張ります。皆さまのお力をどうか貸してください。夢を語るのはそれからにさせてください」
取材が終わると、今村氏は集まったファンひとりひとりの質問に答えていた。再起を祈りたい。
◆取材・文/赤木雅彦
