ライフ

【がんと“普段の行動”】運動してがんリスクを下げても“座りっぱなしのデスクワーク”で台無しに…“リスクを下げる行動”とは

(写真/PIXTA)

コーヒーにはがん予防効果があるとされる(写真/PIXTA)

 日本人の誰もが恐れる死因第1位は今も昔も「がん」。ただ、予防や罹患リスクの研究は日進月歩で進んでいる。「がんになりやすい行動」「がんを遠ざける行動」は何なのか?【前後編の後編。前編を読む

 がん予防にはポリフェノールが豊富な緑黄色野菜のほか、紫、赤などの色の濃い野菜がいい。最新研究ではさらに、キャベツやブロッコリーといった「アブラナ科の野菜」に高い抗がん効果があることがわかった。

 日本人約9万人を対象とした研究で、アブラナ科の野菜をもっとも多く食べた群の男性は、もっとも少なかった群よりがんの死亡リスクが14%も低かったことが判明。植物が有害なものから身を守るための物質「ファイトケミカル」が豊富で、これにがんの増殖や転移を抑える作用があるというのだ。米ボストン在住の内科医・大西睦子さんが言う。

「世界がん研究基金とアメリカがん研究協会が推奨する『がんと闘う食品リスト』でも、ファイトケミカルが豊富に含まれるブロッコリー、トマトといった野菜、ベリー類やぶどうといった果物、くるみなどのナッツ類が上位を占めています」(大西さん)

 飲み物にもがん予防効果が期待できるものがある。2015年のアメリカの研究では、コーヒーをほぼ毎日飲む人はほとんど飲まない人に比べて肝臓がんのリスクが約半分に減少。さらに1日5杯以上飲む人はリスクが4分の1にまで下がった。帝京大学福岡医療技術学部教授でがん専門医の佐藤典宏さんが話す。

「また2020年に韓国の約9万人を対象にした調査では、牛乳を1日1杯以上飲む人は、週に1杯未満しか飲まない人に比べて50才未満の乳がんリスクが42%低いという結果が出ました。カルシウムだけでなく、ビタミンDにも乳がん発症リスクを下げる効果があると考えられます」(佐藤さん)

 ビタミンDは牛乳のほか、魚介類や卵、きのこ類にも豊富に含まれ、日光を浴びることで体内でも生成される。だが私たち日本人にとってビタミンDは「唯一不足している栄養素」だと、東京大学医学部附属病院放射線科特任教授でがん専門医の中川恵一さんが指摘する。

「都内で健康診断を受けた約5500人のうち98%の人に、ビタミンDが不足していたという報告もあるほどです。食品から、積極的にビタミンDを摂ってほしい」

どんなに運動してもデスクワークで台無しに

 食生活の改善だけでなく、やはり運動も重要だ。2022年の早稲田大学などの調査では、筋トレをしているとがんのほか心血管疾患、糖尿病、総死亡リスクが10〜17%低下することがわかった。特に週30〜60分の範囲がもっともリスクを下げた一方、130〜140分を超えるとかえってリスクが高まる。

「運動をすると筋肉から“天然の抗がん剤”と呼ばれる『マイオカイン』という生理活性物質が分泌され、これが慢性炎症を抑え、がん予防につながるとされています」(佐藤さん)

 しかしやりすぎは筋肉に炎症を起こす可能性があるため、無理は禁物。佐藤さんのおすすめは、息切れする程度の早歩きを3分、その後普通の速度で歩くのを3分……と交互に行う「インターバル速歩」。適度な筋トレになり、心肺機能を高めることもできる2023年8月には、スウェーデン・ヨーテボリ大学などが心肺機能が高い男性は肺がん、大腸がん、その他あらゆるがんのリスクが下がることを報告した。

 体を動かすことが予防につながる一方、デスクワークなどで座りっぱなしの時間が長いほどがんリスクは上がる。京都府立医科大学などの研究では、1日7時間以上座っていると乳がんのリスクが36%上がることがわかった。しかも週3回以上運動をしたり、毎日1時間以上歩いたりする習慣があっても、座っている時間が長ければリスクは変わらないという。

「2020年の米テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究でも、もっとも長い時間座っている人は、もっとも座っている時間が短い人と比べてがん死亡リスクが82%も高いことがわかりました」(大西さん)

関連キーワード

関連記事

トピックス

11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(右/読者提供)
【足立区11人死傷】「ドーンという音で3メートル吹き飛んだ」“ブレーキ痕なき事故”の生々しい目撃談、28歳被害女性は「とても、とても親切な人だった」と同居人語る
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《中国とASEAN諸国との関係に楔を打つ第一歩》愛子さま、初の海外公務「ラオス訪問」に秘められていた外交戦略
週刊ポスト
グラビア界の「きれいなお姉さん」として確固たる地位を固めた斉藤里奈
「グラビアに抵抗あり」でも初挑戦で「現場の熱量に驚愕」 元ミスマガ・斉藤里奈が努力でつかんだ「声のお仕事」
NEWSポストセブン
「アスレジャー」の服装でディズニーワールドを訪れた女性が物議に(時事通信フォト、TikTokより)
《米・ディズニーではトラブルに》公共の場で“タイトなレギンス”を普段使いする女性に賛否…“なぜ局部の形が丸見えな服を着るのか” 米セレブを中心にトレンド化する「アスレジャー」とは
NEWSポストセブン
日本体育大学は2026年正月2日・3日に78年連続78回目の箱根駅伝を走る(写真は2025年正月の復路ゴール。撮影/黒石あみ<小学館>)
箱根駅伝「78年連続」本戦出場を決めた日体大の“黄金期”を支えた名ランナー「大塚正美伝説」〈1〉「ちくしょう」と思った8区の区間記録は15年間破られなかった
週刊ポスト
「高市答弁」に関する大新聞の報じ方に疑問の声が噴出(時事通信フォト)
《消された「認定なら武力行使も」の文字》朝日新聞が高市首相答弁報道を“しれっと修正”疑惑 日中問題の火種になっても訂正記事を出さない姿勢に疑問噴出
週刊ポスト
地元コーヒーイベントで伊東市前市長・田久保真紀氏は何をしていたのか(時事通信フォト)
《シークレットゲストとして登場》伊東市前市長・田久保真紀氏、市長選出馬表明直後に地元コーヒーイベントで「田久保まきオリジナルブレンド」を“手売り”の思惑
週刊ポスト
ラオスへの公式訪問を終えた愛子さま(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
《愛子さまがラオスを訪問》熱心なご準備の成果が発揮された、国家主席への“とっさの回答” 自然体で飾らぬ姿は現地の人々の感動を呼んだ 
女性セブン
26日午後、香港の高層集合住宅で火災が発生した(時事通信フォト)
《日本のタワマンは大丈夫か?》香港・高層マンション大規模火災で80人超が死亡、住民からあがっていた「タバコの不始末」懸念する声【日本での発生リスクを専門家が解説】
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
NEWSポストセブン