国内

《東京都知事選ルポ》石丸伸二氏、「ネットの力で躍進した」は本当か? 選挙活動を改めて分析して見えてきた実は重視していた“昔ながらの手法”

銀座4丁目交差点で街頭演説の準備をする石丸伸二候補(撮影:小川裕夫)

銀座4丁目交差点で街頭演説の準備をする石丸伸二候補(撮影:小川裕夫)

「どぶ板選挙」という言葉がある。側溝を覆う板、どぶ板を踏むように路地裏まで入り、くまなく支持を訴える選挙の戦術をいう。このとき、候補者が有権者ひとりひとりに声かけをし、目を合わせ、握手をするなど接触することの効果は高いが、近年は“古い”と冷笑されることもある。SNSなどインターネット上での躍進と得票の繋がりが大きく注目された2024年の東京都知事選挙だが、20年間にわたって選挙と政治、行政について取材を続けてきたライターの小川裕夫氏は、どぶ板選挙はいまも票を増やすのに有効な戦術だと改めて認識したという。事前の予想を覆し、都知事選で次点となった石丸伸二・前安芸高田市長の選挙活動を小川氏が振り返る。

 * * *

 7月7日に投開票された東京都知事選は、現職の小池百合子氏が約291万票を獲得して3選を果たした。都知事選は現職が負けたことがない。ゆえに事前から対抗馬と見られていた蓮舫・前参議院議員も善戦はするだろうが、小池に勝つことは難しい。そうした空気から、小池3選は確実視されていた。

 実際、投票が締め切られた20時00分にNHKが小池に当確を出している。衆議院選や参議院選とは異なり、一人の当選者しか出ない都知事選は票差に関わらず”ゼロ打ち”になりやすい。だから、ゼロ打ちだったからといって必ずしも小池楽勝の選挙戦だったとは断定できない。意外だったのはゼロ打ちの圧勝ではなく、対抗馬と目されていた蓮舫がダブルスコア以上の票差をつけられたこと。また、告示日前にはほぼ無名とも言えた石丸伸二・前安芸高田市長の後塵を拝する惨敗を喫したことだ。

 参議院議員歴20年の蓮舫は政治家歴・知名度など、すべてにおいて石丸を上回っていたはずで、蓮舫の選挙を支援した立憲民主・共産党・社民党に衝撃が走った。市長時代にネット動画がたびたびバズっていたことから、SNS発で若者の支持を得たことが躍進の理由として挙げられることが多いが、現実に選挙活動を取材していた筆者からは、別の側面が票獲得に大きく貢献している様子が垣間見えた。

候補者56人で最も多かった街頭演説

 告示日まで一部の熱狂的な支持者を除けば、石丸の知名度・注目度は低かった。それでもテレビ・新聞といった報道機関が、主要候補の一人に彼を加えた影響は大きかっただろう。

関連キーワード

関連記事

トピックス

会見で出場辞退を発表した広陵高校・堀正和校長
《海外でも”いじめスキャンダル”と波紋》広陵高校「説明会で質問なし」に見え隠れする「進路問題」 ”監督の思し召し”が進学先まで左右する強豪校の実態「有力大学の推薦枠は完全な椅子取りゲーム」 
NEWSポストセブン
起訴に関する言及を拒否した大谷翔平(写真/アフロ)
大谷翔平、ハワイ高級リゾート開発を巡って訴えられる 通訳の次は代理人…サポートするはずの人物による“裏切りの連鎖” 
女性セブン
日本体操協会・新体操部門の強化本部長、村田由香里氏(時事通信フォト)
新体操フェアリージャパンのパワハラ問題 日本体操協会「第三者機関による評価報告」が“非公表”の不可解 スポーツ庁も「一般論として外部への公表をするよう示してきた」と指摘
NEWSポストセブン
スキンヘッドで裸芸を得意とした井手らっきょさん
《僕、今は1人です》熊本移住7年の井手らっきょ(65)、長年連れ添った年上妻との離婚を告白「このまま何かあったら…」就寝時に不安になることも
NEWSポストセブン
暴力問題で甲子園出場を辞退した広陵高校の中井哲之監督と会見を開いた堀正和校長
《広陵高校、暴力問題で甲子園出場辞退》高校野球でのトラブル報告は「年間1000件以上」でも高野連は“あくまで受け身” 処分に消極的な体質が招いた最悪の結果 
女性セブン
代理人・バレロ氏(右)には大谷翔平も信頼を寄せている(時事通信フォト)
大谷翔平が巻き込まれた「豪華ハワイ別荘」訴訟トラブル ビッグビジネスに走る代理人・バレロ氏の“魂胆”と大谷が“絶大なる信頼”を置く理由
週刊ポスト
大臣としての資質が問われる(写真/共同通信社)
三原じゅん子・こども政策担当相が暴力団とゴルフ写真の“反社疑惑”にダンマリの理由「官邸は三原氏のことなど構っていられない」
週刊ポスト
お仏壇のはせがわ2代目しあわせ少女の
《おててのシワとシワを合わせて、な~む~》当時5歳の少女本人が明かしたCM出演オーディションを受けた意外な理由、思春期には「“仏壇”というあだ名で冷やかされ…」
NEWSポストセブン
広陵野球部・中井哲之監督
【広陵野球部・被害生徒の父親が告発】「その言葉に耐えられず自主退学を決めました」中井監督から投げかけられた“最もショックな言葉” 高校側は「事実であるとは把握しておりません」と回答
週刊ポスト
薬物で何度も刑務所の中に入った田代まさし氏(68)
《志村けんさんのアドバイスも…》覚醒剤で逮捕5回の田代まさし氏、師匠・志村さんの努力によぎった絶望と「薬に近づいた瞬間」
NEWSポストセブン
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
《ずっと若いママになりたかった》子ども好きだった中山美穂さん、元社長が明かした「反対押し切り意思貫いた結婚と愛息との別れ」
週刊ポスト
「週刊ポスト」本日発売! 「石破おろし」の裏金議員「入閣リスト」入手!ほか
「週刊ポスト」本日発売! 「石破おろし」の裏金議員「入閣リスト」入手!ほか
NEWSポストセブン