芸能

《伝説の女性編曲家・山川恵津子さんインタビュー》「小泉今日子の『100%男女交際』は59時間不眠不急の“修羅場”を経て完成した」

女性アレンジャーの草分け的存在であり、1000曲以上の編曲に携わった現在も精力的に活動

女性アレンジャーの草分け的存在であり、1000曲以上の編曲に携わった現在も精力的に活動

 小泉今日子、中森明菜、渡辺満里奈、八神純子、広瀬香美、中山美穂、原田知世、坂本冬美、寺嶋由芙──デビューの時期も音楽性も活動スタイルも異なる女性アーティストたちだが、1つの共通点がある。それは、彼女たちの「持ち歌」を1人の女性が編曲していること。女性編曲家として45年間で1000曲以上のアレンジを手がけた山川恵津子さんが、先日『編曲の美学 アレンジャー山川恵津子とアイドルソングの時代』を上梓。執筆の舞台裏や仕事への情熱について聞いた。

“あの頃”の空気を届けたかった

 本書は音楽畑でアレンジの仕事に没頭してきた山川さんの、初の著作となる。

「私がいちばん忙しく仕事をしていた歌謡曲全盛期はレコーディングスタイルも芸能界の在り方もいまとは全然違うので、10代20代の子たちと会話していると面白がられるんですよ。たまたまその話を聞いていた音楽プロデューサーの加茂啓太郎さんに、本に書いてみれば?とすすめられて、思わず引き受けてしまったんです。

 だけど、これまで文章を書いた経験といえば、小学生の頃から高校までつけていた日記帳くらい(笑い)。誰かにインタビューしてもらって本にする“聞き書き”の方法も考えたけれど、あの頃の空気感は自分の言葉で書かなければ伝わらない。書いてみてダメならまた考えればいいか、と思い切って挑戦しました」

『ザ・ベストテン』(TBS系)を始めとして歌番組が絶頂期、小泉今日子・中森明菜・早見優ら「花の82年組」や秋元康氏がプロデュースしたおニャン子クラブほか女性アイドルが活躍し、彼女たちの歌うアイドルソングが日本中が口ずさむ──山川さんの話す「あの頃」、80年代は音楽制作の現場も桁外れの熱気に溢れていた。

「レコード会社も私達のような“職人”も芸能事務所も一丸となってひとつの作品を作ろうとする団結感があった。歌い手であるアイドルへの対応も、当時は何かにつけて“目が行き届いていた”印象があります。中学や高校から親元を離れて暮らす彼女たちに、仕事のスケジュール管理はもちろんのこと、礼儀作法やマナーなど、プロダクションのかたたちが親変わりとなってきっちり教えていた印象があります。

 だけどそれゆえ、作業が深夜に及んだりスケジュールがタイトだったりしたことも数え切れないほどあって……。特に大変だった現場として印象深いのは、小泉今日子ちゃんの『100%男女交際』をアレンジした時。録った音源にダメ出しが入ってまったく別のものを作らないといけなくなったうえ、岡本舞子ちゃんのアルバム制作と別のプロジェクトも同時進行となって、59時間不眠不休でスコアを書き続けてやっと完成。

 そもそもあの曲はダイナミックなパートから始まってイントロに入り、AメロBメロを経てサビに移ったあと、もう1回盛り上がりを迎える複雑な構成で、それをまとめ上げるのは本当に難しかった。忘れられない修羅場です」

関連キーワード

関連記事

トピックス

10月に公然わいせつ罪で逮捕された草間リチャード敬太被告
《グループ脱退を発表》「Aぇ! group」草間リチャード敬太、逮捕直前に見せていた「マスク姿での奇行」 公然わいせつで略式起訴【マスク姿で周囲を徘徊】
NEWSポストセブン
65歳ストーカー女性からの被害状況を明かした中村敬斗(時事通信フォト)
《恐怖の粘着メッセージ》中村敬斗選手(25)へのつきまといで65歳の女が逮捕 容疑者がインスタ投稿していた「愛の言葉」 SNS時代の深刻なストーカー被害
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
「はい!お付き合いしています」水上恒司(26)が“秒速回答、背景にあった恋愛哲学「ごまかすのは相手に失礼」
NEWSポストセブン
三田寛子と能條愛未は同じアイドル出身(右は時事通信)
《梨園に誕生する元アイドルの嫁姑》三田寛子と能條愛未の関係はうまくいくか? 乃木坂46時代の経験も強み、義母に素直に甘えられるかがカギに
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる(クマの画像はサンプルです/2023年秋田県でクマに襲われ負傷した男性)
ヒグマが自動車事故と同等の力で夫の皮膚や体内組織を損傷…60代夫婦が「熊の通り道」で直面した“衝撃の恐怖体験”《2000年代に発生したクマ被害》
NEWSポストセブン
対談を行った歌人の俵万智さんと動物言語学者の鈴木俊貴さん
歌人・俵万智さんと「鳥の言葉がわかる」鈴木俊貴さんが送る令和の子どもたちへメッセージ「体験を言葉で振り返る時間こそが人間のいとなみ」【特別対談】
NEWSポストセブン
大谷翔平選手、妻・真美子さんの“デコピンコーデ”が話題に(Xより)
《大谷選手の隣で“控えめ”スマイル》真美子さん、MVP受賞の場で披露の“デコピン色ワンピ”は入手困難品…ブランドが回答「ブティックにも一般のお客様から問い合わせを頂いています」
NEWSポストセブン
佳子さまの“ショッキングピンク”のドレスが話題に(時事通信フォト)
《5万円超の“蛍光ピンク服”》佳子さまがお召しになった“推しブランド”…過去にもロイヤルブルーの “イロチ”ドレス、ブラジル訪問では「カメリアワンピース」が話題に
NEWSポストセブン
「横浜アンパンマンこどもミュージアム」でパパ同士のケンカが拡散された(目撃者提供)
《フル動画入手》アンパンマンショー“パパ同士のケンカ”のきっかけは戦慄の頭突き…目撃者が語る 施設側は「今後もスタッフ一丸となって対応」
NEWSポストセブン
大谷翔平を支え続けた真美子さん
《大谷翔平よりもスゴイ?》真美子さんの完璧“MVP妻”伝説「奥様会へのお土産は1万5000円のケーキ」「パレードでスポンサー企業のペットボトル」…“夫婦でCM共演”への期待も
週刊ポスト
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
【本人が語った「大事な存在」】水上恒司(26)、初ロマンスは“マギー似”の年上女性 直撃に「別に隠すようなことではないと思うので」と堂々宣言
NEWSポストセブン
劉勁松・中国外務省アジア局長(時事通信フォト)
「普段はそういったことはしない人」中国外交官の“両手ポケットイン”動画が拡散、日本側に「頭下げ」疑惑…中国側の“パフォーマンス”との見方も
NEWSポストセブン