息子で俳優の田村幸士さん
役者でも、サラリーマンでも「結局はがんばった者が勝つ」
思いがけず役者になって、今、その半生を振り返ってどう思うか、とよく聞かれるのですが、わかりません。だって、ほかの仕事をしたことがないから。比べられません。ただ、どんな仕事に就いたとしても、浮き沈みがあり、良いこともあれば悪いこともある。きっと似たりよったりじゃないか、と思うんですよね。役者でもサラリーマンでも、結局はがんばった者が勝ちなんじゃないかな。まあ、僕はちょっとがんばりが足りなかった(笑)。
4年前にコロナが大流行して、俳優の仕事ができなくなってしまったときはつらかった。僕ら70代の者にとっては、1年1年が貴重で惜しいですから、1年できなくなる、というのは重いことでした。
こういうと“演技が命”みたいですが、板の上で死にたい、とは思わないです。死ぬのはどこでもいいのですが、そんなことを考えてちゃいけない、と思います。終活というのも考えない。後ろ向きじゃないですか。死の準備はしちゃいけないですよ。これから始めるつもりで、生きていくために荷物を整理するのはいいと思いますけど。いつまでも健康で家族仲良く、そしていい仕事をしてみなさんに喜んでいただく、というのが僕の願いですね。
(了。第1回から読む)
◆取材・文/中野裕子(ジャーナリスト)撮影/山口比佐夫