碑文谷一家本部ビル。赤い壁が目を惹く

碑文谷一家本部ビル。赤い壁が目を惹く(著者撮影)

「トクリュウ」と暴力団の関係

 指定暴力団稲川会碑文谷一家本部(東京都品川区)の入口脇には、アクリル板で作られた掲示スペースがある。夏場はここに〈ただ笑う〉と筆文字で書かれた紙が張り出されていた。

 掲示が入れ替えられたのは、今から約1か月前だった。

〈告知。昨今、闇バイト、オレオレ詐欺、強盗等多発しておりますが それらの者、組織、団体には碑文谷一家の縄張りに於いて、当家は断固たる処置を取ります(品川区、大田区、世田谷区一部、目黒区一部)〉(※句読点一部筆者) 

 暴力団の義理回状(*編集部注:襲名、縁組、破門、絶縁など暴力団が他組織に送る文書を指す)風に、おどろおどろしいので、こちらで言葉を補い、勝手に口語訳すれば、「闇バイトを使ってオレオレ詐欺や強盗をしている人間、組織に告ぐ。もし碑文谷一家の縄張りでそのような行為をしたら成敗する」とでもなろう。いまや反社会勢力とまで呼ばれるようになった暴力団が、強盗に対して強い言葉でメッセージを送り、プレッシャーをかけたのだ。

 長年、暴力団取材を続けてきた身には違和感がない。暴力団のメンタリティを考えればやりかねない。同様の行為を全国の指定暴力団が行なっても不思議はない。人を通じて関東で最も暴力的な組織……有り体にいえば、最もこの手の強盗事件を起こしかねない団体のトップにも訊いてもらったのだが、「こんな強盗は絶対に許されない」と憤っていた。

 元来、暴力団は地域密着型のアウトロー集団である。博奕をシノギ(暴力団の経済活動)にしていた時代、三下と呼ばれる新入り組員は、近隣の旦那衆に自らの経営する賭場で遊んでもらうために、地元の街を掃除し、祭の警備や雑用をして地域に奉仕した。彼らは暴力装置を隠し持っている。その暴力を使い、自警団的な発想で地域貢献しようとするのは博徒の歴史からみて、自然の成り行きだろう。

 だが、思い出さずにはいられない。オレオレ詐欺の背後にいたのは暴力団だった。もっといえば、2000年頃に頻発していた不良外国人による強盗事件も、暴力団が自宅に現金をため込んでいる家の情報を売り、強盗たちを道案内した。手口を考えれば、今回だって、首謀者には高確率で半グレや元暴力団員、暴力団関係者がいるはずだ。

「SNSを介して特殊詐欺や強盗をはかる匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)への暴力団関係者の関与も指摘され、脅威は衰えていない」(朝日新聞。2024年11月1日)

 新聞報道で懸念されたように、事件の全容が解明されたとき、現役暴力団の名前が挙がる可能性もある。世間は暴力団を裏社会における会社のようなものと誤解しているが、実態は個人事業主の集まりだ。そのため同じ組織の幹部同士、なにをシノギにしているか把握していない。そのためこうした告知をしておきながら、碑文谷一家の組員が逮捕されるかもしれない。そうなればマッチポンプもいいところだ。

 それに断固たる処置を取るとはどういう意味なのか。暴力的解決を匂わせ、強盗団を恫喝していると突っ込まれれば反論できないだろう。それに本気ならなぜ告知を取り下げたのか。訊きたいことが山ほどあったので碑文谷一家を直撃した。

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