フジ・メディア・ホールディングスの臨時取締役会が開かれた23日、フジテレビに入る日枝久フジサンケイグループ代表(時事通信フォト)

フジ・メディア・ホールディングスの臨時取締役会が開かれた23日、フジテレビに入る日枝久フジサンケイグループ代表(時事通信フォト)

 もちろんそこには「放送免許」という誰も参入できない独占的かつ事実上、恒久的な政府による統制が働いている。一括りに「メディア」とされるがテレビ局、とくにキー局は別格の力を持っている。

 しかし今回は違った。多くが声を上げた。そのことについてベテランプロデューサー氏以外の元テレビマン、元代理店の60代、70代複数に聞くと「信じられない」と全員が回答した。これだけ多くのスポンサーが撤退を決める、それも番組すら放送休止にしてしまう。SNSの声は「フジテレビなどいらない」一色だ。

 この「SNSの声」というのも彼らOBは異口同音に「よくわからないが凄いのか?」と懐疑的だった。一般人などお客様センターで適当にあしらってきた、それも彼らには届かない世代のギョーカイ人たち、無理もない。

放送利権を視聴者も支えてきた

 大手ITメディア企業の30代プロデューサーはこう語る。

「スポンサーもそうですがフジテレビからのコンテンツの撤退もこれから増えるでしょう。いまや外資系を中心に巨大ネット配信企業やネットコンテンツ企業など映像化の術はいくらでもある。そうした映像化にテレビ局も絡むことはありますが、フジテレビはそういう製作委員会からも外される可能性がある。とくに外資系はコンプライアンスに厳しいし、人権問題には徹底した姿勢を貫きますから」

 世界全体で3億人の会員数を誇るネットフリックスや月間平均リーチ数が世界中で2億人に達するAmazonプライムを始めとする「黒船」は日本のコンテンツ産業も大きく変えた。スポンサーをつけて番組を制作、放送するという旧来のスタイルではなく資金調達、それもシリーズ総額で100億円や200億円が当たり前の世界になった。エミー賞史上最多18部門の受賞となった真田広之主演、プロデュース『SHOGUN 将軍』(Disney+)のスケールで日本のキー局が自前でドラマを作るのはまず不可能だ。

 そうした海外の製作サイドはコンプライアンス違反、とくにセクシャルハラスメントやセクシャルバイオレンス(性暴力)、セクシャルディスクリミネーション(性的差別)の類に厳しい。プロジェクトに支障が出るだけでなく出資を引き上げられてしまいかねない。あくまで製作側と出資側(両者を兼ねる場合もあるが)は対等である。しかしこの国のテレビ業界はそうではなかった。

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