フジサンケイグループ相談役の日枝久氏(時事通信フォト)

フジサンケイグループ相談役の日枝久氏(時事通信フォト)

 フジもここまでになるとは思っていなかったのだろう。だからこそフジテレビ港浩一社長は動画撮影禁止で参加記者をフジ側が限定した「紙芝居会見」を行った。はっきりいって、日ごろから一般社会をバカにしてないとこういうことはできない。それにしても後日、会見について「失敗」とは。「次はカメラを入れる」とかそこじゃない。

 前出のベテランプロデューサーは長い間コンテンツに携わってきたからこそ、フジテレビだけでない「ギョーカイ」の体質はよくわかると話す。

「1980年代とは時代は変わった。人も変わった。バブル崩壊、IT革命、多くの震災、そしてコロナ禍、1980年代の現役世代も多くは年金者だ。仮に1985年に20歳だった人でもいまや60歳の還暦、フジテレビが一番元気だったころだ。それなのにフジテレビはずっと会社の体質を変えることはなかった。『ギョーカイ』全体とも言える」

 フジテレビは「楽しくなければテレビじゃない」というキャッチフレーズと共に日本の1980年代文化を牽引した。以来ずっと、その「フジテレビのノリ」でやってきた。1990年代もお台場移転と再開発の成功という景気の良さも手伝って、ずっと変わることなく「まあ、フジテレビさんだから」と「ギョーカイ」も「ノリ」と「ネタ」で容認してきた。古い本だが当時「はっきり言ってスカだった!」(別冊宝島『80年代の正体!』、1990年、JICC出版、現・宝島社刊)とした1980年代の負の面に対する揶揄は、まさに刊行から35年経ったいま、回り回ってフジテレビに突きつけられているように思う。

 つまるところ、中居問題はきっかけに過ぎず、いつフジテレビの体質そのものが問題化してもおかしくない状況だった。一社提供の料理番組『くいしん坊!万才』はキッコーマンの申し入れで放送休止、1964年から続く音楽番組『ミュージックフェア』も冠スポンサーの塩野義製薬が社名削除を要請した。もはや問題はフジテレビそのものになった。

「どれも伝統ある番組です。担当も初代から何十年も替わって続いた番組でしょう。私の世代からは考えられない。何であれ、キー局に逆らうなんて」

 これはフジテレビに限った話ではないがテレビ局、とくにキー局の力は絶大だった。アニメで言えば何をどう変えられても文句は言えないし平気で介入してくる。作者、とくに漫画家など局からすれば歯牙にもかけない存在だ。SNS全盛期で育った若者には考えられないだろうが、作者など大ヒット作家だろうが大御所だろうがテレビの前には何の力もない。出版社すら平身低頭するしかない、スポンサーだってキー局の尻尾の代理店に言いくるめられる、それほどまでにキー局というのは絶大で、みなさんが観てきた番組もそうした力学で放送されてきた。

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