つまるところ気晴らしのゲームでしかない人生は、資源の分配の長短が勝者を決める競争だ。無駄に資源を投じれば「ロス」になる。学生ならばたいていの努力は報われるが、社会人になれば、必ずしもそうはいかない。そこが学生と社会人の決定的な違いだ。

 根尾のような才能に恵まれたことはないけど、あれだけ何でもできてしまうと逆に資源分配に迷ってしまうんだろうな、というのはなんとなく想像できる。

 いま、人生の壁と格闘する根尾を見守る少年ドラファンたちは、そこから人生を学ぶだろう。栄光の“ドラ1”とて、約束された道はないのだと。

根尾の翌年にドラフト1位で入団した石川昂弥(時事通信フォト)

根尾の翌年にドラフト1位で入団した石川昂弥(時事通信フォト)

ドラ1たちはどうしてブレイクできないのか?

 根尾ほど全国的な関心を集めたケースではないが、東海大甲府高から3球団競合のドラフト1位で中日に入団した高橋周平選手。そして中日、阪神、巨人とやはり3球団からドラフト1位で指名され、本人の希望していた中日ドラゴンズにやってきた「尾張のプリンス」堂上直倫選手は、いずれもドラファンの熱い期待を受けてブルーのユニフォームに袖を通した、光り輝くルーキーだった。

 だが、思っていたような化学反応はプロでは起きなかった。それどころか、生木に火をつけるような、消化不良な感覚をファンに残した。

 ある日のこと、東京でタクシーに乗ったとき、例によって中日ファンだということを隠して野球談議に花を咲かせていると、運転手がいみじくも言った。

「ドラゴンズはやたらクジには強いけど、誰一人育ってないね。不思議な球団ですよ」

 返す言葉がない。

 在京のドラファン仲間と、いま密かに気を揉んでいるのが石川昂弥選手だ。愛知・東邦高校のスラッガーとしてオリックスとソフトバンクからも指名を受けた逸材だが、与田剛監督が前年の根尾に引き続き、神がかり的なくじ運の強さを発揮して射止めた。

 だが現状はどうだろう。決して活躍していないわけじゃないが、期待には遠く及ばないというのがファンの偽らざる気持ちだろう。なまじ一軍でほどほど活躍することが、逆に引っかかるという不思議な感覚だ。

「直倫のようになっちゃうのかなぁ……」
 酒席で私がふとそう漏らすと、一緒にいたドラファン仲間は素早く反応する。

「そこですよ。昂弥からは直倫と同じ匂いがします」

 直道と昂弥に共通していること。それは決して批判されるべき特徴ではないかもしれないんだけど、あえて嫌われる覚悟で言えば(すでにたくさん敵をつくったと思うが)、「お行儀の良さ」のような気がする。

 ド素人のたわごとだが、彼らがブレイクしきれないのは、技術の問題でもなければ、まじめさに起因することでもないような気がしてならない。

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