第75代横綱・大の里(写真/共同通信社)
「唯一無二の横綱を目指します」と宣言した大の里。大鵬、北の湖、千代の富士、貴乃花ら、角界を代表する名横綱と比較すると、レジェンドたちの特徴や強みを兼ね備えた逸材ぶりが見えてきた──。
大鵬を上回るスピード昇進
待望の日本出身横綱として第75代に昇進した大の里(24)。名誉称号だった『横綱』が番付に登場したのは1890年5月場所の第16代横綱・西ノ海からで、250年以上の歴史の中で横綱はたった75人。大関の256人と比べると、いかに大関から横綱への昇進が狭き門かがわかる。
かくも厳しい世界で、大の里は初の綱取りの重圧をはねのけ、初土俵から所要13場所という昭和以降最速のスピード昇進を果たした。新入幕から9場所での昇進は、昭和の大横綱・大鵬の11場所を上回る最速記録となる。
日体大時代はアマ横綱をはじめ13冠に輝き、将来の横綱候補とされた逸材がプロの世界で期待通りの活躍をみせている。この先も大横綱への道を歩んでいくことになるのか。
元NHKアナウンサーとして大相撲を見続けてきた相撲ジャーナリストの杉山邦博さんは「30年か40年、いや50年に1人の逸材」と断言する。
「これまで70年間にわたって相撲を見て、数多くの横綱の土俵を実況してきましたが、オーバーラップする横綱はいません。将来性を含め、過去に同じような例はみない」
好角家で知られる漫画家・やくみつる氏が続ける。
「相撲を知らない人たちは“周りが弱すぎる”というが、大の里はどの時代でも、たぶん強い横綱だろう。まだ発展途上と考えると、自分が生きている間に見られてよかった。それぐらい強いと思います」
大の里の魅力のひとつが恵まれた体格だ。身長は曙(203センチ)にこそ及ばないものの、白鵬と同じ192センチ。体重は北の湖(169キロ)や貴乃花(160キロ)、大鵬(153キロ)を大きく上回る191キロだ。