ゴルフ、ハーブ栽培、明日の義務がない夜。小さなシアワセを見いだす愉快な暮らし
じめじめとして暗い気持ちになりがちな梅雨の季節。気分転換のためにも、読書でもしてみては? おすすめの新刊4冊を紹介します。
『だいたいしあわせ』阿川佐和子/晶文社/1760円
いつ読んでも楽しい阿川エッセイ。エッセイ界の大御所。大御所とは過去と同じことを書いても飽きさせず、そこに時の流れという新味を添える文才のことだ。前者は怒りん坊だった父上のことや若い頃のこと、後者は相方ができたことや能登災害の支援活動など。避難所では餃子を作り、金沢のトークショーでは連弾演奏や歌の披露も。本書の印税も全額能登復興に寄付される。
結城氏は機知に富んだ小説を書く。でも本書は才気を抑えた実力作だと思う
『どうせ世界は終わるけど』結城真一郎/小学館/1870円
小惑星が地球に衝突して100年後に人類は滅亡。そのカウントダウンが始まった世界を描く短編集である。親友を自死で亡くす地味な女子高生希望、刑期満了の前日に逃亡した永瀬、可愛さを捨て厭世的になる小6女子の山路。彼らが時を経て集結する最終話は圧巻。ルターの名言「たとえ明日世界が滅亡しようとも、今日私はリンゴの木を植える」を結城流に解題した実力作だ。
隕石衝突で絶滅したもの、生き残ったものを見晴るかす壮大な生命史
『恐竜大絶滅 陸・海・空で何が起きていたのか』土屋健/中公新書/1320円
数字の途方もなさにクラクラ。約6600万年前の話だ。ユカタン半島に巨大隕石が落下、大量の煤で日光が遮られて地球が寒冷化する。陸の恐竜、空の翼竜類、海の海棲爬虫類などが滅び、サメ類や鳥類、哺乳類などが生き残る。本書はその前後をクールに、かつドラマティックに描く。化石から再現したイラストも理解の助けに。子供達にこの知識を披露したらかなりエバれそう。
メフィスト賞受賞の作家デビュー作。奥行きのある面白さは一級品
『ゴリラ裁判の日』須藤古都離/講談社文庫/891円
原稿は初読時の印象で書かない。再読を自分に課している。手話のできるローズ(実在のゴリラがモデル)が米国の動物園へ。そこで夫婦になったオスが子供の転落事故で射殺され(実際の事件)、ローズは悲嘆のあまり裁判を起こす。初回は敗訴、2回目は? 正義や権利を問う裁判劇として面白く、ユーモア溢れるローズのキャラも愛さずにはいられない。あ~また面白かった!
文/温水ゆかり
※女性セブン2025年6月26日号